『Gガン』東方不敗マスター・アジア登場30年 何かがおかしい? …何もかもおかしい!

AI要約

1994年に放送された『機動武闘伝Gガンダム』の第12話で、東方不敗マスター・アジアが登場し、物語の勢いが増したこと。

マスター・アジアが従来のガンダムシリーズの概念を打ち壊し、新たな作風を提示したこと。

マスター・アジアの登場により、『Gガンダム』が連続ストーリーに移行し、物語の核心が明らかになったこと。

『Gガン』東方不敗マスター・アジア登場30年 何かがおかしい? …何もかもおかしい!

 本日7月8日は、1994年に『機動武闘伝Gガンダム』第12話「その名は東方不敗! マスター・アジア見参」が放送された日で、今年は30周年にあたります。このエピソードから『Gガンダム』はもちろん、「ガンダム」シリーズのなかでも屈指の人気キャラクター「東方不敗マスター・アジア」が登場しました。

 よく名前について、どこからどこまでを使えばいいかが問題となります。一般的には「東方不敗」は異名で、正式名称は「マスター・アジア」とされていました。つまり東方不敗は流派の名前でリングネームのようなもの、マスター・アジアが名前にあたると解釈されているからです。そのためか番組のEDテロップも「マスター・アジア」名義でした。もっとも文字数の関係で一部の出版関係では、「東方不敗」で表記することも少なくありません。

 マスター・アジアの登場から『Gガンダム』の物語は勢いを増し、急激に人気を集めるようになったといわれています。確かに筆者が感じた当時の空気感もそうでした。では、彼が何をなしたかといえば、それまであった「『ガンダム』シリーズはこうあるべき」という概念を、大きく打ち壊したキャラクターだったと思います。

 素手でMS(モビルスーツ)を破壊するさまはマスター・アジア、ひいては『Gガンダム』という作品がいかなるものかを象徴する要素としてよく語られてきました。しかしながら、この第12話でマスター・アジアが見せたトンデモは、ほかにも山ほどあります。

 エアカーと同じ速度で走るばかりか瞬間移動のような素早さを見せ、鉢巻を十数mまで伸ばしてMSの首を引きちぎり、素手でMSの弾丸を受け止めて銃口に戻し、MSごと瓦礫を持ち上げて横転させる……まさにやりたい放題です。

 これらが後にゲームなどでも再現されて、原典である『Gガンダム』未見の人から「この人は何者?」と興味を持たれることになりました。そうした点では作品の外にも、その名前をとどろかせたほどのことだったわけです。

 こうした行動から、初登場にしてマスター・アジアは、「ガンダム」シリーズといえばリアルな作風という常識ないし固定概念をたったひとりで打ち壊しました。よく「『Gガンダム』はガンダムの常識を打ち壊した作品」といわれており、そのほとんどがマスター・アジアの成し遂げた偉業といっても過言ではないかもしれません。

 物語も、マスター・アジアの登場で大きく動き出し、それまで基本的に1話完結だった『Gガンダム』初の連続ストーリー「新宿編」が始まりました。つまり、それまでレギュラーキャラクターたちの紹介がメインだったストーリーが、この第12話から本格的に動き始め、ようやく『Gガンダム』の物語は本番を迎えたというわけです。

 ちなみに、この第12話において共同名義で作画監督を務めたのが、後に『勇者王ガオガイガー』や『コードギアス 反逆のルルーシュ』などのキャラクターデザインで名前を知られることになった木村貴宏さんでした。しかも木村さんにとってTVアニメでは初の作画監督だったそうです。あの木村さんが担当しただけに、第12話の作画レベルはファンにも納得の完成度でした。