登場人物が記憶喪失に……4月ドラマ「5作品で設定かぶり」が示す業界&視聴者それぞれの事情

AI要約

連続ドラマでの記憶喪失設定が多すぎて業界問題に

主演俳優にキャスティングが依存し、設定かぶりが生じやすい

視聴者の習慣や原作改変の問題が今後も業界を悩ませる可能性

登場人物が記憶喪失に……4月ドラマ「5作品で設定かぶり」が示す業界&視聴者それぞれの事情

この4月クールに放送された連ドラに、登場人物が記憶喪失になるという設定が5作品もあったことが、ドラマ業界で問題になっている。

「見逃し配信が定着したことで、ドラマはマネタイズしやすいコンテンツとなり、放送枠が増加したのは周知の通り。ただ、予算や演出には制限があるため、どうしても″安パイ″な設定はかぶりやすい」(キー局プロデューサー)

7月クールのドラマも『Snow Man』の目黒蓮(27)が主演する『海のはじまり』(フジテレビ系)と『SixTONES』の松村北斗(29)が出演する『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)が″シングルファーザー″という設定かぶりをしている。

「『西園寺さんは家事をしない』は同名の人気漫画が原作なので設定を変更するのは難しいのですが、『海のはじまり』はオリジナル脚本。斬新な設定も可能だったはずですが、ドラマ業界はスポンサーや局の上層部を説得しないと企画が通らない。どうしても、どこかで見たような安パイな設定になりがちなのです」(制作会社ディレクター)

地上波のドラマが「キャスティングありきで制作されているのも、設定かぶりの原因の一つ」だと芸能プロ幹部は言う。

「最近はスポンサーを集めるのも大変。放送枠についているスポンサー企業のCMに出ている俳優を起用したり、数字が取れる人気俳優をとりあえず押さえたりするのが大事です。役者を決めてから、その人に合った原作を探したり、オリジナル脚本を書かせるケースがどうしても多くなる。CMに出演している俳優を使うとなると、スポンサーとの契約でNGな演出が出てくる。だから、どうしても恋愛や職業モノなど、無難な設定になってしまうのです」

前出のキー局プロデューサーは「昨今の視聴習慣の変化も設定かぶりに拍車をかけている」と見ている。

「冒頭十数分だけで観るかどうか判断する視聴者が増えました。それだと、実力はあっても知名度がない俳優が主演だったり、ストーリー展開が遅かったりすると切り捨てられる。だからキャストは同じような顔ぶれになるし、記憶喪失などわかりやすい設定が重宝されるのです」

同名漫画が原作の『セクシー田中さん』(日本テレビ系)では、ドラマ化に際して作者の意向が軽視されたことで大きな問題となったが、このプロデューサーは「同じ悲劇が再び起こりうる」と警鐘を鳴らす。

「地上波ドラマは、たとえば夕食を作りながら観たりする″ながら視聴″が多いため、派手さや、わかりやすさがないと伝わらない。原作では重要な意味を持つシーンであったとしても、静かだったり、動きがなければカットされたり、雑に扱われたりする。今後もズサンな原作改変は行われるでしょう」

「設定かぶりには所属事務所も頭を悩ませている」と前出の芸能プロ幹部が嘆く。

「オファー段階では大まかなプロットしか決まっておらず、クランクイン直前になって設定を知ることが多い。フタを開けたら同じ事務所の俳優同士で設定がかぶっていた、なんてこともありました」

粗製乱造をやめることが、結果的に業界を救うことになるのではないか。

『FRIDAY』2024年7月5・12日号より