ちな監督×角野隼斗、「新しいことをやりたい」2人が初タッグ "音も楽しむ"新感覚アニメーション誕生

AI要約

東宝の若手社員たちが立ち上げた新しいエンターテインメントを創造する「GEMSTONE Creative Label」から誕生した初の劇場公開作品『GEMNIBUS vol.1』が紹介される。

アニメーション作品『ファーストライン』のちな監督と音楽を担当したピアニストの角野隼斗が、初タッグで制作した面白さについて語る。

新しい挑戦ができる喜びを感じながら、劇場公開へ向けての制作過程や感想について語る。

ちな監督×角野隼斗、「新しいことをやりたい」2人が初タッグ 

 東宝の若手社員たちが立ち上げた、実験的で挑戦的な新しいエンターテインメントを創造していくコンテンツ制作レーベル「GEMSTONE Creative Label」から、初の劇場公開作品が誕生。4人の監督たちによってつくり出された短編オムニバス映画『GEMNIBUS vol.1』だ。6月28日より東京・TOHOシネマズ日比谷と大阪・TOHOシネマズ梅田で2週間限定上映される。

 『GEMNIBUS vol.1』のラインナップの中から、唯一のアニメーション作品となる『ファーストライン』のちな監督と音楽を担当したピアニストの角野隼斗に、初タッグで制作した面白さを語ってもらった。

■新しい挑戦ができる喜び「すごいチャンスをいただいた」

――「GEMSTONE Creative Label」は、フォーマット、メディア、そして実績の有無を問わず、クリエイターたちが自由に才能を発揮できる場を提供する才能支援プロジェクトとのことですが、今回参加に至った経緯は?ちな監督にとっては劇場上映される初監督作品になりますね。

【ちな】はい。東宝の今井プロデューサーから連絡があり、それも「白紙ベースで監督のやりたいことをやりましょう」というお誘いでした。アニメーターの大先輩である井上俊之さん(スタジオジブリ)の紹介だったと聞き、バトンを託してもらえたような、すごいチャンスをいただいたと思いました。フィクションですが、自分の体験や、アニメーターの人たちが抱える理想と現実の間の葛藤を表現しました。

――角野さんも劇場にかかる映画の劇伴は初挑戦となりました。

【角野】僕は今井プロデューサーとは長い付き合いの友人なんです。「劇伴をやってほしい」と連絡をもらい「ただの劇伴ではなく、実験的な要素が多分にある作品にしたいから、ぜひ角野の面白い部分を発揮してほしい」と言ってもらえたのがうれしかったです。

――角野さんは2023年4月から拠点をニューヨークに移され、ヨーロッパやアジアの各地で精力的に演奏活動も行われていますが、どのタイミングでオファーを受けたのでしょうか?

【角野】ニューヨークに行ってからです。それまで音楽以外はそんなに興味を持っていなかったんですけど、いろんなことをインプットして、新しいことをやっていきたいと思って。ダンスと音楽、アートと音楽など、芸術のジャンルを超越した表現に触れるならニューヨークが最適だと思って移住を決めたところもあったので、今回の依頼は僕としてもありがたかったです。

――初めてのタッグでどのようにつくっていったのですか?

【角野】日本にいないことも多く、リモートでやり取りしながら進めていきました。

【ちな】脚本をもとに絵コンテを描き、それをつなげたムービー(ビデオコンテ)を角野さんにお渡しして、それをもとに角野さんが何曲かデモを作ってくれたのですが、ラフの絵にデモ曲がついただけで、いいものができると確信しました。最終的にはフィルムスコアリング(できあがった映像に対して音楽をつけていくという手法)で収録しました。作画の作業は大変なところもあるのですが、角野さんが作ってくれた曲を聴くたびに、面白いことをやってくれる人がいてくれて心強いな、と励まされていました。

――絵コンテを見ながら作曲するのは初めてでしたか?

【角野】そうですね。曲を作ること自体はよくあって、ドラマのテーマ曲やCMに使う曲を作ったこともあったんですけど、今回ほど映像と密接につながった曲づくりは初めてでした。何かにインスパイアされて即興で作曲・演奏することはよくあるのですが、それとはちょっと違った面白さがありました。ヨーロッパで無声映画に生演奏の音楽をつけるシネマコンサートに参加した時の感覚に近かったです。

――出来上がった作品を見てどう思いましたか?

【角野】大体の流れは音楽を収録した際に見ていたのですが、最終的にすべてがつながった完成版を見て、自分がつくった音楽の表現が広がったと感じました。生き生きとしたアニメーションとともに、音も生きているように感じられて、うれしかったです。すごくわくわくしました。

――音楽が違っていたら、アニメーションの映像も違った仕上がりになっていたかもしれない、ということはあり得ますか?

【ちな】あり得ますね。今回は角野さんがまだ劇伴を数多く手がけているわけではないというところへの期待が最初からありました。常識や先入観にとらわれない、斬新なアイデアを持ち込んでくれるのではないか、と。角野さんのYouTubeを拝見して、音楽のジャンルを超えたユニークな選曲や演奏をされていたり、いろんな楽器で実験をしていたり、アイデアが面白いと思っていました。僕も自分なりにアニメーションの世界で今までにないつくり方とか、表現を模索して挑戦してきたので、角野さんと組めたことは僕にとってもすごく大きかったです。