河合優実「フィクションなんて作っている場合なんだろうか」と葛藤…劇場アニメ『ルックバック』とシンクロする感情とは

AI要約

河合優実さんと吉田美月喜さんが声優初挑戦で主役を演じる『ルックバック』。藤野と京本の青春を描いた青春アニメ映画は、次々と話題作に出演する河合優実さんにとっても特別な作品となった。

アフレコでの経験や監督とのやりとりについて細かく語る河合優実さん。藤野を演じる際の心境や共演者との息の合った演技について、初心者ならではの視点から語られている。

河合優実さんがアニメーションと声優の関係について学んだことや、藤野のキャラクターに命を吹き込む感覚についても触れられている。

河合優実「フィクションなんて作っている場合なんだろうか」と葛藤…劇場アニメ『ルックバック』とシンクロする感情とは

漫画に魅せられたふたりの少女が主役の青春アニメ映画、『ルックバック』。主人公のひとり、藤野を演じるのは目覚ましい活躍を続ける河合優実だ。本作では声優業に初挑戦するなど、次々と話題作に出演する彼女だが、自分の仕事に疑問を持つこともあるという。映画の登場人物、藤野に背中を押されたと語る彼女がいま、感じていることについて話を聞いた。

――本作『ルックバック』が声優初挑戦となる河合優実さん。学年新聞に掲載した四コマ漫画をきっかけに絵を描き始める小学4年生・藤野を演じられました。

オーディションで選んでいただけたということは、「“俳優としての私”が思っているものを表現しながら、藤野というキャラクターをつくっていくことを求められているのかな」と考えながらアフレコに臨みました。

声優としてのお仕事は初めてだったので不安でしたし、緊張していましたね。

――もうひとりの主人公・京本役の吉田美月喜(みづき)さんも声優初挑戦。京本は藤野と同じ学年新聞に四コマを連載し、その圧倒的な画力で藤野を驚嘆させた不登校の同級生です。

美月喜ちゃんとは以前ドラマで共演していて、「話しやすくていいコだな」という印象がありました。ふたりとも声優初挑戦でわからないことだらけだし、アフレコは難しいし、でもなんとかいい作品にしたい。そういう気持ちが混じり合って、最初はそれぞれがちょっとピリッとしていたかも(笑)。

――音響監督の方が環境を整えてくれたとか。

声優さんであれば個々に収録するところを、美月喜ちゃんと会話するように同じブースでアフレコさせてもらって。彼女が京本を演じようとするさまを間近で感じながら演技できたのは非常にありがたかったです。

――劇中、ふたりが実際に出会うのは物語開始から約2年がたった卒業式の日。藤野は卒業証書を渡すため、しぶしぶ京本の家を訪れます。

京本と出会った後、藤野が田舎道を走って帰るシーンは、好きな場面のひとつです。原作でも好きな箇所なんですけど、キャラクターが動くことでまた一段と大きな感動を受けました。

――京本の前ではそっけない態度の藤野ですが、ひとりになった途端、全身で喜びを表現する印象的な場面です。

藤野が喜びを爆発させながら、田舎道をスキップともジャンプとも、ガッツポーズともつかない動きをしながら走っていく。

私自身原作で最も好きな場面なので、演じる上であの感動を下回りたくないと思いながら、「何か限定しない声を出そう」ということを考えて演技していました。

――確かに、声にならない息遣いが伝わってきました。

アニメの収録を体験する前は、身体的な演技を伴わず、声だけでキャラクターに“なる”必要があると思い込んでいました。

ですが、アフレコの時に絵を見て、「すでに存在している藤野という人物に命を吹き込んでいく」感覚になりました。お芝居でいうところの「体の演技」はすでに終わっているんだなと。そう思えるくらい、躍動感のある素晴らしいアニメーションでした。

――今回監督を務めた押山さんからアドバイスや要望はありましたか?

監督とのやりとりで一番印象的なのは、劇中藤野が男性にキックをする場面です。台本には「うらア!!」とだけ書いてあり、何回かトライしたんですがうまくいかない。

「もっと」「もっとですね」「その50倍ぐらい」というやりとりを音響監督さんと繰り返していたら、「ちょっと今から行きます」と押山監督が自らブースに来られて。

何をされるのかと思いきや、「僕が今から実演します」と言って、「うらア~~~ッ!」と、150%の力で藤野の叫びを実演してくださったんです(笑)。その姿を見せていただいたことで、監督としてすごく信頼できました。