今年の流行語大賞は朝ドラ『虎に翼』の“必殺フレーズ”か。日本社会の風通しを良くするワードとは

AI要約

伊藤沙莉主演の連続テレビ小説『虎に翼』で主人公・猪爪寅子が発する「はて?」の意味と重みについて。

猪爪寅子の「はて?」は社会の当たり前に疑問符を突き付ける重要なフレーズであり、時代背景とともに彼女のキャラクターを象徴するものである。

伊藤沙莉が寅子役を通じて「はて」を発するとき、それが自動的な発言ではなく、彼女自身の内なる疑問や感情を代弁していることが明らかになった。

今年の流行語大賞は朝ドラ『虎に翼』の“必殺フレーズ”か。日本社会の風通しを良くするワードとは

 伊藤沙莉主演の連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合、毎朝8時放送)で主人公・猪爪寅子によって発せられる「はて?」の一言。

 寅子が生きる過去と視聴者が見ている現在が、この疑問形によって重なる。本作でもっとも重要なフレーズである。今年の流行語大賞に選ばれても不思議ではないと思うのだが、どうだろう?

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、「はて?」が流行語大賞になると思う理由を解説する。

 時期尚早だが、筆者の中での2024年流行語大賞はすでに決まっている。4月から放送が始まった朝ドラ『虎に翼』で、伊藤沙莉扮する主人公・猪爪寅子がシグニチャーのように連発する「はて」である。

 毎話必ず繰り出されるこの「はて」は、社会の当たり前に対する痛烈な疑問符である。最初に耳にしたのは、第1週第1回。嫌々のお見合い場面。相手の横山太一郎(藤森慎吾)に好感を持ったものの、太一郎を上回る時事批評を矢継ぎ早に繰り出した寅子が「女のくせに生意気な」と言われる。これに対して素直な疑問を抱いた。

 男女同権を著しく欠いていた時代。ましてや公の場で女性が男性に「はて」を発することは、太一郎が言うように分をわきまえない態度とみなされただろう。でもそのことに何の躊躇もなく、スパンと疑問を突きつける寅子のソーシャルな人物像はすがすがしい。

 そんなあっぱれな「はて」が、猪爪寅子を象徴する必殺フレーズとして、今年の流行語候補にあがってもなんの疑問もない。戦中に日本初の女性弁護士、戦後には裁判官になった三淵嘉子をモデルとする本作への敬意も込めて。

 2024年3月21日にNHK放送センターで行われた出演者の会見では、寅子を演じる伊藤が、丁寧な「はて」の解釈を披露した。自分の感情をひた隠しにすることを強いられた女性たちが、そろって無感情を表す「スンッ」とした状態でいるしかなかった時代をつんざく「はて」とは。

 伊藤自身が抱く疑問をも「代弁」するという「はて」を発する上で、彼女は「劇中の『はて?』に対して、疑問を持たずに『はて?』って言えるんです」と言っている。これは興味深い。伊藤が寅子役を通じて「はて」を発するとき、ほとんど自動的な発語のように聞こえるのはそのためか。