CD批評誌「レコード芸術」がオンラインで9月復刊へ クラウドファンディングで実現

AI要約

日本唯一のクラシックCD・レコードの批評雑誌「レコード芸術」がオンライン版として復刊する。クラウドファンディングを成功させた同誌は、読者にとっては貴重な『批評の場』として期待を集める。

創刊から71年を迎える「レコード芸術」は、格付けされた特選や準特選の評価がCD購入の目安となり、日本のクラシック文化を総覧できる媒体として高く評価されてきた。

「レコード芸術ONLINE」は、有料コンテンツとして新譜月評やアーティストインタビューを提供し、新たな「新レコード・アカデミー賞」も創設される。クラシック音楽愛好家にとって待望の復活となる予定だ。

CD批評誌「レコード芸術」がオンラインで9月復刊へ クラウドファンディングで実現

71年の歴史を重ねた日本で唯一のクラシックCD・レコードの批評雑誌「レコード芸術」が、オンライン版として復刊する。同誌は昨年7月号で休刊したが、今春、クラウドファンディングを実施、目標金額を達成した。清本真章「レコード芸術ONLINE」編集長は「まだ実体のない媒体に対して『期待』だけでこれだけのご支援をいただけたことは、驚きとともに本当にありがたいことだと思います」と話している。

■「特選」が購入の目安に

「レコード芸術」の創刊は昭和27(1952)年2月(3月号)と古い。月刊でCD・レコードの批評専門誌として評価を得ていた。交響曲、協奏曲、オペラなどとジャンル分けされ、それぞれ別の批評家らが毎月の新譜を試聴し、「特選」「準特選」などと評価する仕組みだった。読者にはこの評価がCD購入の目安になり、レコード会社やレコード店は「『レコード芸術』の特選盤に選ばれました」と販促PRとして役立たせた。

西原稔・桐朋学園大名誉教授は「レコ芸の真価は格付けだけではなく、日本のクラシック文化を総覧できる点にあったように思います。この雑誌の個性的な寄稿記事は魅力的でした」と話す。ところが、「原材料費など諸経費の高騰、業界を取り巻く状況の変化など、さまざまな要因が重なり、時代の波にあらがい続けることが困難となりました」(最終号編集部だより)と休刊した。

クラウドファンディングを始める際の記者会見で時枝正社長は「休刊は力に陰りが見えていたわけでありませんでした。復刊へ向け模索していました。復刊を願う3000人を超える署名で要望が寄せられました。社内でもさまざまな議論がありました。クラウドファンデインングはかなり冒険的な手法です。逆に何もしないことが信頼を失ってしまいます」と話した。

■なくてはならぬ場

クラウドファンディングは4月10日から5月24日までを募集期間として行われた。最低目標金額は1500万円。支援金は、1万円では1年間購読、3万円は片山杜秀氏ら「レコード芸術」人気執筆者らによる講座をオンラインで受講するなどのリターンをつけた。結果、最終目標の2000万円超には届かなかったが、839人から約1707万の支援金が寄せられた。清本編集長は「クラシック音楽の録音メディアにとって『批評の場』がなくてはならないものであると考えている人が、これだけ多くいるということが、クラファンの結果で明らかになった」と話す。

「レコード芸術ONLINE」は9月2日から配信が開始される予定。「新譜月評」は毎月約100タイトル。交響曲、管弦楽曲など10ジャンルで評論家総勢20人が批評、「推薦」「準推薦」「無印」の3種類に格付けされる。この新譜月評や新譜一覧表、連載などは有料コンテンツで月額1000円で読める。アーティスト・インタビューなど無料コンテンツも用意される。また「レコード芸術」誌を権威づけてきた「レコード・アカデミー賞」に代わり、新たな「新レコード・アカデミー賞」(仮称)を創設。「レコード芸術総集編」(仮称)をムックで刊行する。