クロロホルムで気絶させるのは不可能? 実はフィクションだった漫画の知識

AI要約

漫画に登場する知識が実はフィクションであることがある。例えば、視神経が首を通っていないことや、青酸カリの実際の匂い、クロロホルムによる気絶などについて誤解があることが紹介されている。

視神経は首を通っていないため、「紐切り」という技は実際には不可能。また、青酸カリの匂いがアーモンドとは異なり、その毒性についても誤解がある。

さらにクロロホルムによる気絶も実際には現実的ではなく、少量では一瞬で気絶させることは困難であり、毒性もある。漫画や小説で描かれる手段とは異なる側面がある。

クロロホルムで気絶させるのは不可能? 実はフィクションだった漫画の知識

 漫画を読んでいると、今まで知らなかった知識を得る機会もあるはず。例えば格闘漫画を読んで人体の構造や格闘術などの知識が増えたり、サスペンス漫画からは医療や科学などの知識を学ぶことができる。しかし中には、漫画から得た知識が実はフィクションだったというケースも。今回は本当のようで実は違った漫画の知識を紹介していこう。

■視神経は首を通っていなかった!

 『グラップラー刃牙』シリーズに出てくるキャラクター・鎬昂昇の必殺技「紐切り」は、極限まで鍛え上げた指先で相手の神経を引っ張り出して引きちぎるという強力な技。作中では主人公・範馬刃牙の首から引き出した視神経を切断し、視力を奪っている。

 しかし実際のところ視神経は脳内で完結しており、首は通っていないのだ。確かに視神経が首を通る必要はないため、冷静に考えたらわかることかもしれない。技のインパクトと『刃牙』特有の勢いに押されて、「視神経は首を通っているんだ」と疑わずに読んでいた人も少なくないようだ。

■サスペンス漫画で有名なあの知識も……

 次は『名探偵コナン』をはじめ多くの漫画に出てくる、「青酸カリはアーモンド臭がする」という知識。多くの人がお菓子に使われているような香ばしい香りを連想しているだろうが、実際の「アーモンド臭」は収穫前のアーモンドの花や実に似た甘い香り。

 またたまに見る「青酸カリを飲むと、すぐに血を吐いてもがき苦しんで亡くなる」というシーンも、漫画の中での演出のよう。青酸カリは飲み込むと胃酸と反応し、体内で青酸ガスを発生させる。このガスが肺に取り込まれて血液中に入り、最終的に呼吸障害を引き起こして死に至るという仕組みだ。そのため青酸カリを致死量飲み込んでも、死に至るまではある程度の時間がかかる。

 ちなみに被害者の呼気の臭いをかいで「この臭いは青酸カリ……」と推理する場面があるが、これは大変危険な行為だったりする。呼気には青酸ガスが混ざっているため、臭いをかいだ人にも被害が及ぶ可能性があるのだ。

■「クロロホルムで気絶させる」も現実的ではない?

 また漫画だけでなく小説や映画でもよくある、背後から忍び寄ってハンカチに染み込ませたクロロホルムを嗅がせて気絶させるという誘拐手段。この手段も現実的ではない。

 そもそも吸入麻酔として使われていたクロロホルムは、息をして吸い込み、肺を薬で満たすことで麻酔効果を発揮する薬品。しかし肺に行きわたらせるためには数分間深呼吸する必要があり、布に染み込ませた程度の濃度では一瞬で気絶させるには不十分だ。またクロロホルムは毒性があり、肝臓の障害や腎不全、不整脈などを引き起こすことも。もし仮に十分な量を吸わせて気絶させることができたとしても、体にダメージを与える可能性があるといえる。

 青酸カリやクロロホルムは昔からさまざまな漫画や小説に登場しているため、不思議と説得力があり、信じていた人も多いのではないだろうか。今回紹介したもの以外にも、事実とは違うフィクションな知識が漫画の中には隠れているかもしれない。