復職した新聞記者を描くスローシネマ ノルウェー映画『ヒューマン・ポジション』9月公開

AI要約

映画『ヒューマン・ポジション』は病気の療養から復職した新聞記者の日常を描いた作品で、主人公アスタが人生の一歩を踏み出す姿が描かれている。

青くて物悲しいノルウェーの夏を舞台に、アスタと彼女のガールフレンドであるライヴの穏やかな日常が描かれ、アスタが心の居場所を見つける過程が描かれている。

監督のエンブレムは、小津安二郎やロベール・ブレッソンからインスピレーションを得ており、作品中に小津愛が表現されている。

復職した新聞記者を描くスローシネマ ノルウェー映画『ヒューマン・ポジション』9月公開

  病気の療養から復職した新聞記者の日常を描いた映画『A Human Position(原題)』が、『ヒューマン・ポジション』の邦題で9月14日よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開されることが決定した。

 本作は、喪失感を抱えた主人公アスタが人生のちいさな一歩を踏み出す、猫と優しさと静かな時間に満ち満ちたスローシネマ。本作が長編2作目となるアンダース・エンブレムが監督を務めた。フィヨルドに囲まれ、絵画のような色彩豊かな風景の監督の故郷オーレスンを舞台に、優しく美しいタッチで、アスタの心の機微や日常を丁寧に描いていく。

 主人公アスタを演じるのは、エンブレム監督のデビュー作『Hurry Slowly(英題)』に続いて再びタッグを組んだアマリエ・イプセン・ジェンセン。トラウマを抱える心の揺らぎや内に秘めた聡明さを体現した。コケティシュな仕草と歌声で、彼女に優しく寄り添うライヴ役を演じたのはマリア・アグマロ。柔道着を着て着物を着る。日本映画を観て、囲碁を打つ。箸を使って食事をする。そんな2人を見守る映画となっている。

 青くて、物悲しいノルウェーの長い夏。うっとりするような静けさの中、パステルカラーに包まれた港町の丘をゆっくりと登って振り返るアスタ(アマリエ・イプセン・ジェンセン)。新聞社に勤める彼女は、地元のホッケーチーム、アールヌーボー建築を保存するための小さなデモやクルーズ船の景気など地元の人々を取材しニュースにする。彼女の支えとなるガールフレンドのライヴ(マリア・アグマロ)は、デザインチェアを修復し、キーボードを演奏し、作曲をする。子猫が歩きまわる家で、料理を作ったり、古い映画を観たり、ボードゲームを楽しんだりと2人は穏やかな時間を過ごしている。ある日、アスタは10年間ノルウェーに住み、働いてきた難民のアスランが強制送還されたという記事を目にする。その事件を調べて行くにつれ、アスタは自身を覆っていた無気力感を払拭し、仕事とプライベートの両方で自分が求める”心の居場所”を次第に見出していく。

 自身のインスピレーションの源としてロベール・ブレッソンと小津安二郎を挙げるエンブレム監督は、劇中でも『お茶漬けの味』のセリフを登場させるなど、小津愛あふれる演出も。また、もう1つの主役とも呼べる椅子への想いが2人をより結びつけている。あわせて公開された特報映像にも姿が見える、アスタの日常をそっと見守る子猫も名脇役として作品に登場している。