『夜の巷』マツコ、『タモステ』タモリ…なぜ2人は“ゴールデンのロケ特番”が成立するのか

AI要約

ゴールデン2時間特番の『夜の巷を徘徊する』と『タモリステーション』が放送され、大きな反響を呼んだ。

マツコ・デラックスとタモリによる大物MCのロケ企画は、中高年層だけでなく若年層からも支持を得ている。

コンテンツの質とともに、2人の謙虚さや対応力がロケ番組の成功に貢献している。

『夜の巷』マツコ、『タモステ』タモリ…なぜ2人は“ゴールデンのロケ特番”が成立するのか

7日夜、ゴールデン2時間特番『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日)が放送され、ネット上にはさまざまな反響が飛び交った。

同番組はマツコ・デラックスが夜の街をさまよい、気になる店に入ったり、通りすがりの人に声をかけたり、時には爆買いする様子などをフィーチャーしたロケ番組。2015年春のスタートからコロナ禍に見舞われ、『夜の巷を徘徊しない』に改題しながら2021年春まで放送されて以来、3年ぶりの復活だった。

この放送の6日前の1日夜、こちらもゴールデンでの90分特番『タモリステーション』(テレ朝)が放送された。同特番は「タモリがタイムリーな話題に切り込んでいく」というコンセプトで2022年1月から不定期放送され、今回が12回目。「インバウンド最前線~訪日外国人に学ぶ日本の観光底力~」と題して「2023年に行くべき52カ所」(ニューヨークタイムズ)で世界2位に選ばれた盛岡を訪れる様子が放送された。

ともにマツコ・デラックス、タモリという大物MCによるロケ企画であり、どちらもネット上の反応は上々。SNSには活発にコメントが書き込まれたほか、ネットメディアもその内容を次々に記事化していた。マツコは51歳、タモリは78歳と中高年層のタレントながら、なぜ若年層からの支持も求められるゴールデンの単独ロケ特番が成立するのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

■複数でも旬でも難しいロケ特番

街ブラや旅などのロケメインの番組をめぐる状況は決して順風満帆とは言えない。コロナ禍において、『夜の巷を徘徊しない』、『火曜サプライズ』(日本テレビ)、『ダウンタウンなう』(フジテレビ)、『ぴったんこカン・カン』(TBS)などが終了したが、その状態から十分に回復したとは言いづらい状況が続いている。

そもそもこれらのロケ番組が終了した理由は、コロナ禍でのハイリスクだけではなく、視聴率の低迷やマンネリなどの背景があった。その問題は解消されたわけではなく、実際に現在それなりの結果を得ているのは、グルメに振り切って演出に工夫を施した『バナナマンのせっかくグルメ!!』(TBS)や『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ制作・日テレ系)程度と言っていいかもしれない。

若手・中堅・ベテランを問わず、芸能人が街ブラや旅をするだけの番組をゴールデン帯で放送することは難しい状況が続いている。「3~5人の人気者をそろえても、旬の俳優や芸人をゲスト出演させても、視聴率と配信再生数はなかなか得られない」のが現実だ。

つまり、複数の人気者でも、旬のタレントでも難しい番組を単独で成立させてしまうのが、マツコとタモリのすごさ。今回の放送でそれだけ「別格」であることが証明されたと言っていいだろう。しかも2人は民放各局が重視するコア層(13~49歳など)を上回る年齢だけに、いかに突出した存在であるかが分かる。

単に人気だけなら、他にもゴールデン特番を成立させられるタレントはいるだろう。しかし、ロケ特番で重要なのは、各地域と各住民への対応力。その点でマツコとタモリは芸能人の中でもトップクラスと言える資質や能力を見せている。

2人は常に謙虚であり、大物とは思えないほど目線が低い。終始、「ロケをさせてもらっている」という姿勢は変わらず、ロケ先のスポットや人への配慮を欠かさない様子が画面から伝わってくる。制作サイドが大物扱いすることをよしとせず、過剰に笑いを取りに行くこともない。単独ロケ番組は「誰がロケをするか」が重要であるにもかかわらず自分が前に出ようとはせず、スポットや人を前に出している。