自販機に硬貨入れると「消防団員募集中」の声…若い世代確保へ自治体などが知恵

AI要約

埼玉県内の消防団員数が減少しており、若い世代の勧誘が難しい状況にある。

現役団員がアイデアを出して新たなPR方法を模索している。

学生を新たな消防団員として育成する取り組みも行われている。

 地域防災の要となる消防団員の減少が続いている。昨年4月時点の埼玉県内の団員数は1万3332人で、前年より210人減って過去最少を更新した。若い世代にどうアピールするのか。自治体や現役団員が知恵を絞っている。

 さいたま市大宮区北袋町のビルに3月中旬、新しい飲み物の自動販売機が設置された。硬貨を入れると「消防団員、募集中です」と呼びかける声が流れる。飲み物のボタンを押すと、「放水はじめ」「火の用心」といった音声も流れる。

 発案したのは、飲料大手「ダイドードリンコ」(大阪市)に勤める嶋田勝さん(55)。さいたま市消防団中央分団に所属する現役の消防団員で、日頃から人手不足を感じてきた。「自社のしゃべる自販機で、ポスターとは違ったPRができるはず」と活用を思い立ったという。

 県内には消防団が64ある。県消防課によると、県内の団員数は過去10年で約1000人減った。特に若い団員が少なく、20~30歳代の新規入団者数はこの10年で4割減少した。各市町村が条例で定めた団員の定数に対する充足率は、64団の平均で86・1%という。

 「ここまで減ってしまうとは。コロナ禍で新人団員の勧誘が難しかったのも追い打ちになった」。狭山市消防団の伊藤隆弘団長(61)は嘆く。同団の充足率は71・5%で県内ワースト2位だ。

 団員が少ないと、火災時の初期消火や災害時の住民誘導が手薄になる可能性がある。また従来は、市内の巡回活動などを当番制で行ってきたが、ローテーションが組めなくなり団員が毎回出る形が続いているという。消防車両の点検、整備などの日常的な活動が多いことも、団員減少の一因になっているといい、伊藤団長は「地域貢献への意識が希薄になってきている」と頭を抱える。

 新たな担い手として注目されているのが学生だ。県は県内の大学や専門学校で消防団の活動などを紹介する出前講座を開催。さらに一部の市町村では、学生が消防団活動に参加したことへの証明書を発行する制度を導入している。就職活動での自己PRに使うなど、学生に利点があるという。県消防課によると、昨年4月現在で学生248人が、県内の消防団で活動しているという。