日中首脳会談で岸田首相、台湾情勢「主張すべきは主張」も 懸案解決は見通せず

AI要約

岸田文雄首相は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調して中国の李強首相との初めての正式会談に臨みました。軍事演習によって地域の緊張が高まる中、台湾問題を取り上げました。

岸田首相は李氏との会談で、台湾周辺での軍事演習への懸念を外交ルートで伝え、東シナ海情勢と台湾情勢を区別しながらも、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調しました。

日中の戦略的互恵関係の推進を確認しつつ、福島第1原発処理水の海洋放出や邦人の拘束、東シナ海での排他的経済水域侵犯などの懸案を解決するよう求めましたが、問題の改善は進んでいません。

岸田文雄首相は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する方針で中国の李強首相との初めての正式会談に臨んだ。台湾の頼清徳総統の就任を受け、中国が23、24日の2日間にわたって台湾を取り囲むように軍事演習を実施し、地域の緊張を高めたためで、岸田首相は大国としての責任ある行動を求める立場から台湾問題を取り上げた。

「台湾については最近の軍事情勢を含む動向を注視している旨、伝え、台湾海峡の平和と安定はわが国を含む国際社会にとって極めて重要であるという点を強調した」

岸田首相は李氏との日中首脳会談後、ソウル市内で記者団にこう述べた。

政府は、中国軍による台湾周辺での軍事演習について、外交ルートで懸念を伝えており、岸田首相は会談では「懸念」という言葉は使わなかった。「深刻な懸念」を表明した尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海情勢と台湾情勢を切り分けた形だが、同行筋は「『最近の軍事情勢』が台湾周辺での軍事演習を指すのは明らか。言わんとするところは伝わっている」と説明した。

岸田首相は李氏との間でも、昨年11月に習近平国家主席と合意した日中の「戦略的互恵関係の包括的な推進」を確認しつつ、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出を受けた日本産水産物の禁輸措置や、相次ぐ邦人の拘束、東シナ海の日本の排他的経済水域(EEZ)内への中国による大型ブイの設置など懸案事項を列挙し、解決を迫った。

ただ、台湾問題を含むこれらの懸案は岸田首相が習氏との会談でも前向きな対応を働きかけたにもかかわらず、半年が経過しても改善や解決に至っていない。

中国では習氏への権力集中が一段と進み、李氏の政治的な影響力は歴代首相と比べても小さいとみられている。このため、日本政府内には「今回の会談で問題が一気に解決するとは思わない」(外務省幹部)との声があった。

それでも李氏が中国最高指導部の序列2位であるのは事実で、首相同行筋は「ナンバー2に言うべきことを言い、今後のハイレベルでの会談につなげる。少しでも前に動かしていけるように言い続けていく」と語った。(ソウル 原川貴郎)