《東京都知事選ルポ》石丸伸二氏、「ネットの力で躍進した」は本当か? 選挙活動を改めて分析して見えてきた実は重視していた“昔ながらの手法”

AI要約

現職の小池百合子氏が東京都知事選で3選を果たし、対抗馬の蓮舫が惨敗する結果となった。

20年間の取材経験を持つライターが、知名度の低かった石丸伸二・前安芸高田市長の票獲得戦術を振り返る。

石丸が意外な躍進を遂げる中、SNSの力だけでなく、どぶ板選挙の効果も再認識された。

《東京都知事選ルポ》石丸伸二氏、「ネットの力で躍進した」は本当か? 選挙活動を改めて分析して見えてきた実は重視していた“昔ながらの手法”

「どぶ板選挙」という言葉がある。側溝を覆う板、どぶ板を踏むように路地裏まで入り、くまなく支持を訴える選挙の戦術をいう。このとき、候補者が有権者ひとりひとりに声かけをし、目を合わせ、握手をするなど接触することの効果は高いが、近年は“古い”と冷笑されることもある。SNSなどインターネット上での躍進と得票の繋がりが大きく注目された2024年の東京都知事選挙だが、20年間にわたって選挙と政治、行政について取材を続けてきたライターの小川裕夫氏は、どぶ板選挙はいまも票を増やすのに有効な戦術だと改めて認識したという。事前の予想を覆し、都知事選で次点となった石丸伸二・前安芸高田市長の選挙活動を小川氏が振り返る。

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 7月7日に投開票された東京都知事選は、現職の小池百合子氏が約291万票を獲得して3選を果たした。都知事選は現職が負けたことがない。ゆえに事前から対抗馬と見られていた蓮舫・前参議院議員も善戦はするだろうが、小池に勝つことは難しい。そうした空気から、小池3選は確実視されていた。

 実際、投票が締め切られた20時00分にNHKが小池に当確を出している。衆議院選や参議院選とは異なり、一人の当選者しか出ない都知事選は票差に関わらず”ゼロ打ち”になりやすい。だから、ゼロ打ちだったからといって必ずしも小池楽勝の選挙戦だったとは断定できない。意外だったのはゼロ打ちの圧勝ではなく、対抗馬と目されていた蓮舫がダブルスコア以上の票差をつけられたこと。また、告示日前にはほぼ無名とも言えた石丸伸二・前安芸高田市長の後塵を拝する惨敗を喫したことだ。

 参議院議員歴20年の蓮舫は政治家歴・知名度など、すべてにおいて石丸を上回っていたはずで、蓮舫の選挙を支援した立憲民主・共産党・社民党に衝撃が走った。市長時代にネット動画がたびたびバズっていたことから、SNS発で若者の支持を得たことが躍進の理由として挙げられることが多いが、現実に選挙活動を取材していた筆者からは、別の側面が票獲得に大きく貢献している様子が垣間見えた。