自転車の2人乗りでも「反則金」 クルマ並み「青切符」導入へ 対象となる違反行為は110以上 「規制だけでなく道路などのインフラ整備も重要」と専門家

AI要約

自転車の交通違反に反則金を科す改正道路交通法が可決された。対象は16歳以上で、110種類を超える違反が5000~1万2000円の反則金対象となる。

青切符制度が導入される背景や目的、自転車に対する取り締まりの必要性について解説。

自転車運転者の取り締まりを効果的に行うため、刑事罰ではなく反則金を導入することで厳罰化が進められる。

自転車の2人乗りでも「反則金」 クルマ並み「青切符」導入へ 対象となる違反行為は110以上 「規制だけでなく道路などのインフラ整備も重要」と専門家

自転車の交通違反に「反則金」を科す「改正道路交通法」が、5月17日に参院本会議で可決された。スマートフォンなどの「ながら運転」や「信号無視」など、110種類を超える違反が対象となり、反則金は5000~1万2000円程度になる見通しだ。16歳以上が対象で、2026年までに実施される。

確かに、自転車にヒヤリとさせられることは多い。マナー向上のために、「青切符」に期待する声もある。しかしこの制度、対象となる違反行為は110以上。このルールをすべて把握するのは、普通の自転車利用者にとってちょっと難しそうだ。

なぜ今、自転車に「青切符」なのか。毎日往復20キロの自転車通勤を日課とする、本田聡弁護士に話を聞いた。

本田聡弁護士:今回、法改正の柱となった「青切符」制度とは、1968年に自動車の運転者に対して導入された「交通反則通告制度(いわゆる「反則金制度」)」のことです。ひと言でいうと「交通違反に対して、反則金を納めることで、刑事罰を免れる」という制度です。今は、自動車や原付バイクに適用されていますが、それを自転車にも適用拡大することになります。

1960年代、自動車産業の発展に伴い、道路交通法違反事案が増加、刑事事件が激増していました。しかし、交通違反は、軽微なものから重大なものまで多種多様です。そこで、「反則金制度」を導入し、軽微な交通違反は、反則金の納付という簡易な方法で処理を済ませることになりました。増大していた刑事事件数を減少させることが目的でした。

しかし、今回の法改正で、自転車に「交通反則通告制度(反則金制度)」を適用するのは、目的が異なります。

現行、自転車には「赤切符」しかありません。赤切符が交付されると、刑事事件として警察の事情聴取を受け、起訴されれば裁判に進むことになります。警視庁では、令和4年10月31日以降、従来、警告で済ませていた違反行為について、積極的に赤切符を交付することになりました。つまり、罰金等の刑事罰を受け、前科がつくようになる訳です。

しかし、赤切符での取り締まりの実効性は、疑問符のつくところです。自転車が右側通行をしたからと、刑事罰として起訴して罰金を払ってもらうとなると、大変なことになりそうです。非常に多数起こるであろう違反を、すべて刑事事件として処理できるだけの体制は用意されていないでしょう。何より、同じ交通違反で、自動車が青切符(反則金制度)で、自転車は赤切符(刑事罰)という不均衡なことになってしまいます。

とはいえ、ここ数年、コロナ禍の影響もあって自転車の利用は増加しており、それに伴い、事故件数も増加しています。自転車のマナーに関する批判も増えています。

そこで、自転車運転者の取り締まりをしやすくする方法として、刑事罰(赤切符)ではなく、より簡易な手続で済む反則金(青切符)を科すことにしたのです。

これまでほとんどしてこなかった(できなかった)取り締まりを実施することになりますから、その意味では「厳罰化」ということが言えます。