未解決で時効に BOACスチュワーデス殺人事件 警視庁150年 43/150

AI要約

東京都杉並区で英国航空の客室乗務員が他殺体として発見される事件が起き、捜査が難航する

捜査で重要参考人とされた神父が日本語を一切使わず通訳を挟んでやりとりを続ける

神父は急遽帰国し、事件は解決の糸口を見失う。捜査者も無力感を抱く

昭和34年3月に東京都杉並区の善福寺川で英国海外航空(BOAC=現・英国航空)の客室乗務員をしていた、27歳の日本人女性の他殺体が発見された。警視庁の捜査で重要参考人として浮上した神父は海外へ出国したまま、時効が成立。宗教の壁や戦後日本の国際的な立場の弱さも露呈したとされる事件だ。

重要参考人とされたのは、ローマ・カトリック教会サレジオ会のベルギー人神父。警視庁の捜査で、神父は事件の数カ月前に被害女性と一緒にホテルにいたり、事件の3日前に一緒に車に乗っていたりする親しい関係性だったことが発覚する。

しかし捜査は難航する。神父は任意の出頭要請を拒み続け、5月にようやく出頭。取り調べは、昭和の名刑事、平塚八兵衛が担当した。

だが、神父は日本語が堪能だったにもかかわらず一切使わず、通訳を挟んだやりとりが続く。「落としの八兵衛」と呼ばれた平塚も、「ことばの通じないのは、なんとしても乗りこせない」(『刑事一代』)と振り返っている。

神父は6回目の取り調べを前に、急遽帰国。事件は暗礁に乗り上げた。『刑事一代』によれば、平塚は兵庫県に住む女性の遺族に、捜査の説明に赴く。神父と女性の関係について説明が及んだところで、「刑事さん、もう結構ですよ」と話は打ち切られた。平塚は「なんともやりきれねえ気持ちだった」とこぼしていたという。(前島沙紀)