危うくて儚い永遠の記録。バイクを愛した男たちの自由と破滅の軌跡『ザ・バイクライダーズ』

AI要約

1960年代のアメリカ・シカゴに実在した伝説的モーターサイクルクラブにインスパイアされたバイク映画『ザ・バイクライダーズ』の物語は、主人公キャシーとバイカーのベニーの関係、モーターサイクルクラブの急激な拡大、そしてクラブ内外での緊張関係を描いている。

本作は、写真家ダニー・ライオンの「The Bikeriders」に基づいており、バイクを愛するアウトサイダーたちが犯罪集団へと変貌していく過程を描いている。バイク乗りたちの生き方と時代背景が重要な要素となっている。

俳優陣の華やかなキャスティングや40台以上のビンテージバイクの使用など、本作はバイク映画のファンにとって見逃せない作品となっている。

危うくて儚い永遠の記録。バイクを愛した男たちの自由と破滅の軌跡『ザ・バイクライダーズ』

 1960年代のアメリカ・シカゴに実在した伝説的モーターサイクルクラブにインスパイアされた、歴史に名を刻むファン必見のバイク映画が『ザ・バイクライダーズ』です。

 物語の舞台は1965年のアメリカ・シカゴ。不良とは無縁の生活を送っていたキャシー(ジョディ・カマー)が、出会いから5週間で結婚を決めた男は、喧嘩っ早くて無口なバイク乗りのベニー(オースティン・バトラー)でした。地元の荒くれ者たちを仕切るジョニー(トム・ハーディ)の側近でありながら、群れを嫌い、狂気的な一面を持つベニーの存在は異彩を放っています。

 バイカーが集まるジョニーの一味は、やがて“ヴァンダルズ”という名のモーターサイクルクラブへと発展しますが、クラブの噂は瞬く間に広がり、各所に支部が立ち上がるほど急激な拡大を遂げていきます。その結果、クラブ内は治安悪化に陥り、敵対クラブとの抗争が勃発。ジョニーは、自分が立ち上げたクラブがコントロール不能な状態であることに苦悩していました。

 一方、バイクと暴力に明け暮れるベニーの危うさにキャシーは不安を抱え、ベニーは自分を束縛しようとするキャシーとの将来に葛藤します。そんななか、暴走が止まらない“ヴァンダルズ”で最悪の事態が起こってしまい――。

 アメリカの写真家ダニー・ライオンの1st写真集「The Bikeriders」(1968年初版)にインスパイアされた本作。この写真集は、60年代のシカゴに実在したバイク集団“Outlaws Motorcycle Club (アウトローズ・モータサイクル・クラブ)”の日常を描写したソーシャル・ドキュメンタリーであり、ダニー・ライオンは数年間にわたり、アウトローズの正式なメンバーとしてバイクに乗り、カメラとテープレコーダーを担いで取材を続けました。

 モーターサイクルクラブとしては、“ヘルズ・エンジェルス”、“バンディドス”と肩を並べ、世界3大の規模を誇るアウトローズを、劇中では架空のバイク集団“ヴァンダルズ”に置き換え、創立から数年間の軌跡が描かれます。アメリカの政治的、経済的、社会的変化が激しかった時代に、バイクを愛するアウトサイダーたちが当初に抱いていた「生きてこそ生きる」という倫理観を裏切り、恐るべき犯罪集団へと変貌していく過程を、事実を基に映し出します。

 この物語のストーリーテラーであるキャシーを演じたのは『最後の決闘裁判』などのジョディ・カマー。キャシーのパートナーでありヴァンダルズで異彩を放つ存在ベニーには『エルヴィス』、『デューン 砂の惑星 PART2』のオースティン・バトラーが演じ、ヴァンダルズのカリスマ的リーダーのジョニーは『マッドマックス 怒りのデスロード』、『ヴェノム』シリーズで知られるトム・ハーディが扮します。

 ほかにも、ヴァンダルズのメンバー・ジプコに『ブレット・トレイン』で知られるマイケル・シャノン、ヴァンダルズを取材する写真家ダニーに『チャレンジャーズ』、『ウエスト・サイド・ストーリー』のマイク・フェイスト、放浪のバイカー・ソニーに「ウォーキング・デッド」シリーズのノーマン・リーダスといった豪華なメンバーが脇を固めます。

 本作では、クラブの創設者でリーダーのジョニーが乗る、1956年型「ハーレーダビッドソン FLH」をはじめ、40台以上のビンテージバイクが使用されたそうです。物語や俳優陣の演技だけでなく、大スクリーンで疾走するビンテージバイクたちにも目が奪われそうで、期待が高まります。

『ザ・バイクライダーズ』は、2024年11月29日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開です。