大手回転寿司チェーンが抱える“ジレンマ”。「ひと皿100円均一」からの脱却も、“強みを失う”結果に

AI要約

回転寿司チェーンの現在地を分析。大手系とグルメ系の動向、市場の飽和状況、価格競争のリスクなどを取り上げる。

大手系回転寿司が600店舗以上で飽和状態になっている現状。価格競争から脱却するため、価格を上げて多価格帯で勝負する動きがあるが、リスクも存在する。

グルメ系回転寿司とは、高価格で素材の質にこだわり、手作りの寿司を提供する形態。大手系との差別化を図りつつ、クオリティの向上に注力している。

大手回転寿司チェーンが抱える“ジレンマ”。「ひと皿100円均一」からの脱却も、“強みを失う”結果に

外食産業専門コンサルタントの永田ラッパと申します。「日刊SPA!」では、これまで30年間のコンサルタント実績をもとに、独自の視点から「食にまつわる話題」を分析した記事をお届けしていきたいと思います。

今回のテーマは、「回転寿司チェーンの現在地」です。戦国時代の様相を呈している同業界、有名チェーンであっても決して安泰ではないのです。各社の動向について、“プロ目線”で斬っていきます。どうぞお付き合いくださいませ。

回転寿司は「大手系」「グルメ系」の2タイプに大別されます。この中でもとくに注目したいのが大手チェーン系の『スシロー』『くら寿司』『はま寿司』『かっぱ寿司』の4社。回転寿司業界について語る際は、この4社の動向がとても重要になってきます。

しかしこの4社、国内市場においてはすでに飽和状態になっています。これはいまに始まったことではありません。2010年ごろには、大手系回転寿司は国内市場で「一ブランド600店舗上限説」というものがデータで出ていたのです。事実、すでに各社とも600店舗を超えています。

大手系回転寿司が飽和状態を打開する方法として「ひと皿100円均一」からの脱却という仮説が以前からありました。これまで100円で提供していたものを120円、130円、200円などと価格を上げていき、多価格帯で勝負していくのです。しかしこれにはリスクがあります。『すし銚子丸』『がってん寿司』などのグルメ系回転寿司の存在です。

グルメ系回転寿司とは、産地直送など味や鮮度のいい素材を使い、高価格で寿司を提供している回転寿司のことです。大手系が「I型」の寿司レーンを使っているのに対し、グルメ系の多くは「O型(小判型)」のレーンを使います。大手系はシャリロボットや軍艦ロボットなどを使って寿司を作りますが、グルメ系はO型レーンの内側に寿司職人が入って握ります。

手間や労力という点で見ると、大手系はグルメ系と大きな差があります。「安くて美味しくてお腹いっぱいになれる」のが大手系の強みであったはずです。それが価格を上げていくとグルメ系との差が小さくなり、クオリティの面で太刀打ちできなくなってしまうのです。