スキニージーンズが再び“クール”になる日は来る?

AI要約

スキニージーンズの人気が下降し、リラックスしたシルエットが主流だが、最近一部のセレブやブランドが再びスキニージーンズを取り入れる動きが見られる。

ファッション業界の専門家によれば、スキニージーンズの復活は遅れる可能性があり、現在はリラックスしたフィットやオーバーサイズが人気のピークにある。

しかし、着心地が悪い面もあるスキニージーンズが必ずしも復活するとは限らず、ファッションのトレンドは常に移り変わることが指摘されている。

スキニージーンズが再び“クール”になる日は来る?

リラックスしたシルエットが全盛だが、今後スキニージーンズ人気が再燃することがあるのだろうか? 英版『GQ』のライターがファッション業界の専門家たちに訊いた。

告白したいことがある。実は、つい最近まで僕はスキニージーンズを履いていた。よし、言ったぞ。そう、履いていたのだ。

初めてのスキニージーンズ購入は15年前、今でも覚えている。その頃の僕は、肩まである長髪で、顔の6割にかかる髪をかき上げながら暮らしていた。Tumblrで目にするすべてのポストに「RAWR(当時のネットスラングでアイラブユーの意)」とコメントしがちで、マイ・ケミカル・ロマンスのアルバム『デンジャー・デイズ』を妄信的に聴きまくっていた。いい時代だった。

◾️Z世代に葬り去られたスキニー

スキニージーンズは、当時の僕にとって日常のユニフォームだった。GAPのパーカーに合わせたのはスキニージーンズ。チェックのシャツにもスキニージーンズ。何を着てもボトムスはスキニージーンズだった。実際、90年代生まれの人間にとって、スキニージーンズは大きな存在だったのではないだろうか。しかし、気がつけば、スキニージーンズはZ世代によって葬り去られていた。まるで第2の肌のようなあの感覚は、もう支持されてはいないらしい。スキニージーンズの夢は死んだのだ。

「2010年ごろを思い出すと、ほとんどの人がスキニージーンズを所持しており、一般的にスキニーであればあるほど良いとされていました」。そう語るのは、クーポンやディスカウントを提供するプラットフォームWethriftの創業者で、トレンドに詳しいニック・ドリューだ。「ここ数年、ファッション業界において、メンズのスキニージーンズはNGという共通認識が広がっています。多くの人がこれに同意し、“アンチスキニージーンズ”を忠実に守っているのです」

マーケットリサーチファームのEditedによれば、メンズのリラックスフィットのデニム売上は近年15%増加しているという。一方、ウィメンズのワイドデニムの売上は脅異の97%増。人々は急激に、よりゆったりとした選択肢を求めるようになったのだ。ゴープコア・トレンドの台頭と共に、SNSにポストされるメンズウェアは、必要以上にポケットのついたカーゴパンツで溢れかえった。

「パンクからプレッピーまで、いつの時代もシルエットは重要であり続けています」と語るのは、アパレルショップNot/Applicableの創設者でありコンサルタントでもあるナターシャ・アドヴェイニだ。「ただ、ここ数年のメンズファッションは、より多様になっています。実験的なトレンドがあったり、革新的なファブリックが使われたりしています。例えば、以前よりもワイドなパンツの形や、リサイクル製品、ヴィンテージデニムなどですね」

◾️セレブがタイトなシルエットを後押し?

そんな中、昨年末にベラ・ハディッドが、じつにベラ・ハディッドらしい動きをした。スキニーを着用したのだ。さらにその1カ月後、LAの街でスキニーを着るロバート・パティンソンが目撃された。街中でのスナップだけではない。バレンシアガやミュウミュウ、アレキサンダー・マックイーン(新クリエイティブディレクター ショーン・マクギアーの体制下だ)など、大手ブランドも、デニムのシルエットを細くしたのだ。どれもまだ本当にスキニーと呼べるほど細くはないかもしれないが、これは、たぶん明らかなサインなのではないだろうか。一周回ってタイトなシルエットが再びやってきているのだ。

「今、普通に街でスキニージーンズを見かけるのは稀です。しかし、それこそが、ブランドやインフルエンサーがスキニーを復活させようとしている証拠と捉えることもできます」そう語るのは、Farfetchのシニア・メンズウェアエディターのルーク・レイモンドだ。「#indiesleazeという2000年代初期のノスタルジックな復活が、支持を集めています。これは、まさにスキニージーンズ復活への完璧な流れと言えるでしょう」

各アパレルショップも、スキニージーンズの復活を間近で見ているという。Matches Fashionが持つデニムの在庫は210本。うち4パーセントがスキニーだ。Mr Porterは、全ジーンズの5パーセント強がスキニーであり、今後数カ月でさらに増えるという。Mr Porterのバイヤー担当ジョージ・アーチャーは「サンローランやセリーム オムなど、影響力のあるラグジュアリーブランドのエッジとグランジの効いたインディーなスタイルを好む人にとっては、スキニージーンズは1度もトレンドから外れてはいません」と解説する。「バギーシルエットのトレンドは今がピークだと思います。市場が飽和状態になれば、ファッションに敏感な人たちがそこから抜けていくのが常です。次シーズンのランウェイでは、より細身のシルエットが見られるようになりますよ」

「スキニージーンズは、ソーシャルメディアの完璧主義に対する荒療治のように見えます」と語るクリエイティブ戦略ファームのMorning、ストラテジストのアリーシャ・ブロックルバンク。「友達のお兄ちゃんがPrimarkの黒のスキニーを学校にはいてきていたり、11歳くらいの女の子がダメージスキニーの下に網タイツを合わせていたりした2013年頃を彷彿とさせますね。無邪気に実験的なファッションを試みることは、私たちが求めるノスタルジアを提供していくのでしょう。かつてデジタルの世界に憧れた、あの頃を懐かしむような感じですね」

◾️「遅かれ早かれスキニーは復活する」

しかし、誰もがスキニージーンズの復活を感じ始めているわけではない。スキニージーンズの復活なんてまだ先だという見方をする人もいる。「スキニージーンズがクールという立場を取り戻す日は必ずくるでしょう。ただ、その復活は数シーズンは先になりそうです」。こう語るのは、ECプラットフォームソリューションのTHGでメンズバイヤーを務めるアンドリュー・ウッドワードだ。「リラックスしたシルエットの人気や、オーバーサイズ、ストレートカット、ワークデニムの流行は、今がピークです」

しかし、スキニージーンズで忘れてはいけないことがある。それは、クールな一方で非常に着心地が悪いということ。エディ・スリマンによるディオール オムの、スーパースレンダーな日本製ロウデニムを覚えているだろうか。カルト的な人気で一目置かれる存在となったデニムだ。

「どんなトレンドも、ファッション好きな人々の心に何らかの知恵を植え付けていくものだと思っています」と語るイギリスのファッションアーカイブEndymaの創設者マイケル・カーダマキスだ。「シルエットの流行は移り変わります。現在流行しているオーバーサイズで私が個人的にいいなと思ってるのが、着用した人の方向性がよくわかることと、着心地がとてもいいことが両立していることです」。カーダマキスは続ける。「極上の着心地を求めることが、ファッション好きにとって罪ではなくなったのです。最近のトレンドは、それをうまく反映しています。遅かれ早かれスキニーは復活するでしょう。ただ、願わくば、かつてのスキニーのような着心地の悪いトレンドにはなってほしくないですね」

From: GQ UK

By Adam Cheung

Translated and adapted by Soko