「スマホゲームは精神的アヘン」と規制していた中国でゲーム『黒神話:悟空』が空前のヒット、当局の方針転換の裏側

AI要約

中国国防部の定例会見で、珍しい笑いを誘ったエピソードが発生。記者が南シナ海問題を質問し、報道官がアメリカの行動を批判する一方、中国国産ゲームに言及して場内を沸かせた。

中国国防部の会見は一般的に緊張感が漂い、報道官の発言は強硬。しかし、呉報道局長の答弁が意外な方向に行ったため、会場は笑いで包まれた。

報道官はアメリカの南シナ海情勢への介入を批判し、中国文化に関連づけつつ、南シナ海問題に対する中国軍のスタンスを伝えた。その答弁によって、珍しい一幕が生まれた。

 中国では、多くの中央官庁が、先代の胡錦濤政権の頃から、「情報公開」を名目に、定例の記者会見を行っている。

 その中で、最も緊張感に溢れていると、参加した記者たちが一様に証言するのが、毎月の月末に行われる中国国防部(防衛省に相当)の会見である。午後3時から約2時間開かれるが、報道官の物言いは、極めて強硬だ。

 例えば、「台湾の国防部は○○と発表したが事実か?」などと聞こうものなら、「台湾は中国の不可分の一地方なのに、何が『国防部』だ!」と怒鳴りつけられてしまう。

 ところが、8月29日に行われた呉謙(ご・けん)報道局長(大校=一佐に相当)の定例会見で、珍しく笑いが漏れるシーンがあった。

■ 「あなたは大ヒットゲーム『黒神話:悟空』を知っているか?」

 この日は計21人の記者が質問したが、6番目に指名された記者が、中国とフィリピンが衝突している南シナ海のセカンド・トーマス礁の領有権問題について質問した。

 「8月27日、米インド太平洋軍のパパロ司令官がこう述べた。『フィリピンの船が南シナ海で補給任務を執行する時に限り、アメリカの艦船が護送することも可能だ』。さらに、『これは完全に合理的な選択だ』とも述べた。これに報道官はどうコメントするか?  中国軍はどのような態度を取るのか?」

 すると、呉報道局長はこう答えたのだ。

 「事実がすべてを証明している。アメリカこそが、南シナ海の情勢を攪乱させている最大の黒幕だ。アメリカ軍の一部は、いわゆる2カ国間での条約を口実にして、中国を抑え込もうという妄想を抱いているのだ。これは完全に、成し遂げられることのない任務というものだ。

 あなたが聞いてきた中国軍の態度だが、あなたは最近の中国国産のゲーム『黒神話:悟空』(Black Myth: Wukong)を知っているか?  孫悟空は、中国文化の代表の一つだ。私も幼い頃、多くの孫悟空の映像を見たものだ。

 その中で、歌詞の二つの文句を、私は非常に印象的に覚えている。それは、『段差を飛び越えて大きな道となり、困難や危険を振り払って再び出発する』というものだ。この二つの文句をもって、あなたが問うた問題の回答としたい」

 この答弁に、会見場の中国人記者たちは、爆笑となったのだった。