花火大会はもはや「持続不可能」か、ドローンショーは解決策になる? 世界で進む置き換わり

AI要約

花火を中止し、代わりにドローンショーを行うケースが増えている理由として、花火が環境や動物に与える悪影響が指摘されている。

学術誌に発表された研究によると、花火の突然の光と音は、鳥や他の動物に影響を与え、驚愕反射を引き起こすことがある。

一部の人には花火の光や音がPTSDなど精神的な問題を引き起こす可能性があり、花火に対する不安感や過覚醒が長期間続くことがある。

花火大会はもはや「持続不可能」か、ドローンショーは解決策になる? 世界で進む置き換わり

 毎年7月4日、米国の独立記念日を祝う多くの米国人に祝典の終わりを告げるのは、ごう音と共に夜空を照らす花火だ。しかし今、米国の各地、そしてこれまで花火を打ち上げてきた世界各地のイベントで、花火を中止するケースが増えている。代わりに夜空を彩るのは、ドローンの大群が一斉に描き出すアニメーションだ。

 ドローンショーが増えているのは、今ドローンへの関心が高いからとも言えるだろう。しかしドローンショーを推進する人々は、人にも動物にも環境にも悪影響を及ぼす花火はもうやめるべきだと言う。今年は、米国各地でドローンショーが見られそうだ。

 はたして、ドローンショーは花火にとって代わるのだろうか。それとも大きな「壁」のせいで、一瞬の輝きで終わってしまうのだろうか。

「花火の影響について調査を始めたころ、その悪影響の大きさにとても驚きました」と話すのは、オーストラリア、カーティン大学分子生命科学学科のビル・ベイトマン准教授だ。

 ベイトマン氏と同僚は、学術誌「Pacific Conservation Biology」に2023年1月に発表した論文の中で、花火の「非常に有害な」影響について書いている。それによると、花火の突然の光と音は、鳥にねぐらや巣を放棄させ、他の動物の繁殖にも影響を及ぼすという。

 原因の1つは驚愕反射にある。突然の刺激を受けた時、筋肉が収縮し、まぶたが閉じられ、脈が速くなるといった無意識の反応だ。

 人間や動物は危険に直面した時、体の最も弱い部分を守るために、驚愕反射を進化させてきた。ベイトマン氏らは、花火の突然の音と光は、動物に驚愕反射を引き起こし、苦痛を与えるばかりか死をもたらすこともあると書いている。ツルの幼鳥が大きな音に驚いて、まだ飛べないのにもかかわらず巣から飛び出したという記録もある。

 人間にも驚愕反射はある。しかし簡単に驚く人もいればそうでもない人がいる。そこには多少なりとも遺伝子が関わっていると考えられているが、精神状態やPTSDを患っているかどうかも関係している。

 実際、過剰な驚愕反応がPTSDの診断基準となっている。つまり花火に大きな不安を感じる人は、単に驚愕反応が過剰というだけではないかもしれないのだ。予測のつかない花火の光や音で、戦闘経験のある人は辛い体験や記憶を思い出し、花火が終わったあとも長期にわたり不安感や過覚醒に悩まされる可能性がある。