「中東の女性」イメージを覆す挑発的で美しい女たちのポートレイト

AI要約

写真展「心よりも声高な」は、アラブ人とイラン人の女性写真家10名による作品で構成され、展示されている女性被写体が注目されている。

監修者のラニア・マタルの作品は、レバノン内戦や現代の若い女性のポートレイトで知られ、展示では20歳で米国に移住した経験をもとにした写真が展示されている。

被写体の女性たちは混乱と落ち着きを併せ持ちながら、レバノンの背景で自然なポーズをとっている。マタルは被写体と協力し、個人的な場所でリアルなポートレイトを撮影している。

「中東の女性」イメージを覆す挑発的で美しい女たちのポートレイト

中東アジアに生きる女性たちを同様の経験をしてきた女性の写真家らが撮ると、どんなポートレイトになるのか。米紙「ワシントン・ポスト」記者が、世界的にも類を見ない写真展を批評する。

米国ワシントンDCにある中東研究所のギャラリーで開催中(2024年5月9日~10月4日)の写真展「心よりも声高な」に出品しているアラブ人とイラン人の写真家10名は、全員が女性だ。そればかりか、その被写体もほぼ全員が女性なのだ。

これほど女性が注目されているのも、写真家ラニア・マタルが監修した最初の展示ならば相応しく思える。というのも、マタルは中東や米国に暮らす女性や少女の繊細で親密なポートレイト作品で知られているからだ。

マタルの作品は、ワシントンDCにある国立女性美術館などの美術館で幅広く展示されてきた。今回の展示では、マタル自身も出品を依頼されている。

展示の最初を飾るのは、1975年に始まったレバノン内戦を記念したマタルの作品シリーズ「50年のときを経て 私はどこへ行くのか?」からの写真6枚だ。

レバノンでパレスチナ人の両親のもとに生まれ、内戦中に20歳で米国に移住したマタルは、近年の経済危機の最中、また2020年にベイルート港で起きた爆発事故の直後にレバノンを去った若い女性らを写した。展示が始まってから受けたインタビューで、マタルはこう語る。

「若い頃の自分のセルフポートレイト同然に彼女たちを見ています。私も完全にわかるからです。既知のものすべてを置いていくという選択に直面せざるをえず、彼女たちがそのことをどう感じているのか──」

マタルが写した女性らは混乱と不全に取り囲まれていても、落ち着いて安らかで、挑発的にさえ見える。マタルは被写体の女性らと協力し、レバノンのなかでそれぞれ個人的に思い入れのある場所で、わざとらしさを感じさせることなく演出されたポートレイトを撮影した。

反政府デモで燃やされた、花が散乱するマイカーの残骸のなかに座る女性。穏やかな地中海を背景に、未完成の建物のテラスで割れたガラスに囲まれながら、赤いアームチェアに座り、目を閉じて日光浴する女性。