松井大輔「ドリブル特化の指導で、後世に残る選手育成を」横浜FCや浦和で異色コーチング

AI要約

松井大輔は現役引退後、横浜FCのスクールでドリブルを指導しつつ、浦和レッズアカデミーでロールモデルコーチを務めている。

自身のドリブリング愛は子供時代から続いており、成功と失敗を重ねながらプロとしてのキャリアを築いてきた。

フランスでのプレーとフットサル経験が、松井のドリブリングに深みを与えた。

松井大輔「ドリブル特化の指導で、後世に残る選手育成を」横浜FCや浦和で異色コーチング

2024年2月に現役引退を発表した松井大輔。現在は横浜FCのスクールでドリブルを中心に指導している。また浦和レッズアカデミーのロールモデルコーチにも就任。自身の武器であるドリブルをいかに子どもたちに伝えているのか? インタビュー2回目はドリブラー育成の重要性について訊いた。

――年齢を重ねた松井選手は献身的な守備やバランサーとしての能力も長けた選手という印象がありますが、やはりドリブルは大きな武器だと感じます。子どものころから、ドリブルが好きだったのでしょうか?

「そうですね。ただ単にボールをずっと持ち続けていたかったので。試合でボールが持てる時間は限られているじゃないですか? 僕らは『キャプテン翼』世代です。ボールを持って、相手を抜いて、スルーパスを出す翼くんは本当にカッコよくて、翼くんを真似るのが流行っていた時代だったので、自然とそれにとりつかれていったという感じです」

――とはいえ、常に翼くんみたいにはできないですよね。

「もちろん。プロになってから毎日僕は躓いてましたよ。昨日はできた、でも今日はできない。この試合は良かったけど、次の試合はダメだったとか、ドリブラーは波があるので。ドリブルというのは、相手と対峙して、抜くか獲られるかの2択しかない。効率良く抜けるなんてそうそうないんです。三笘(薫)選手は効率良く抜けているけど、それはロジックがあるから。すごいと思いますよ」

――壁にぶつかりながら、重ねたキャリアだったんですね。

「やっぱり失敗しないと得るものってないと思うんです。成功ばかりだと、実はメンタル的には弱くなる。ドンと落とされたときに、這いあがれないから。毎日の練習で、試合で、失敗を重ねるわけじゃないですか? そのたびに怒鳴られる。でも、それが僕にとっては大事なことでした。今思えば、僕に関わってくれた監督は、そうやって失敗することも許してくれていた。

怒鳴られはするけれど、『ドリブラーなんだから、失敗することで怖気づくな』というメッセージがあったし、そういう監督と出会えたことはすごく嬉しかった。僕はなかなか難しい選手だと自分でも思っているけれど、そういう僕を使ってくれるんだから。代表でいえば、(イビチャ・)オシムさんもそうだし、岡田(武史)さんもそうでした。いろんな監督がいましたけど、やっぱりありがたいですね」

――ヨーロッパで長いキャリアを過ごしたことが、失敗を恐れずにチャレンジすることに影響を与えましたか?

「フランスへ行ったことは、僕のキャリアにとってもっとも大きな分岐点だったと思います。4-4-2の左や右でプレーし、目の前の相手を1対1で抜かないと、自分の価値が無くなっていく。そういう環境で戦ったことは、大きなプレッシャーを背負い、難しさもありましたけど、その勝負で勝って、アシストや得点することで、自分の評価を上げられる。そういう勝負は厳しいけれど、同時にとても楽しかったですね」

――武器をさらに磨くことができたんですね。

「あと、フットサルをやったことも大きいです。フットサルは狭いコートで、少ない人数で戦わなくちゃいけないので、戦術もサッカーとは違います。1対1の攻防の場面も多い。そういうフットサルでのボールタッチ、ボールキープを経験したからこそ、今の僕の思考、ドリブルのロジックも整理できたと感じています。

始めたときは、もっと軽く考えていたんですよ。フットサルはとても深かった。サッカーと通じる面もありますが、別競技だと感じました。35歳で引退すれば、もっと良い指導ができたかもしれない。でも、フットサルをやって本当によかった」