【NBA】人間的に大きな成長を遂げたカイリー・アービング「悔しいけど、この悔しさを来シーズンに持ち込んではダメだ」

AI要約

ルカ・ドンチッチは挫折を知らず、毎年のステップアップを当たり前とし、悔しさから次のシーズンに備える姿勢を示す。

カイリー・アービングは過去の困難を経験し、内面の旅を経てリーダーシップを発揮し、謙虚な姿勢でチームを支える。

カイリーは敗者としての誇りを持ち、次シーズンへの挑戦を刺激的だと語り、自身とチームの成長を感謝している。

【NBA】人間的に大きな成長を遂げたカイリー・アービング「悔しいけど、この悔しさを来シーズンに持ち込んではダメだ」

NBAファイナルで1勝4敗での敗退が決まった直後、ルカ・ドンチッチはその心境を問われて「何もない。ただ悔しいだけ」と言葉少なに語った。10代から才能を発揮し、ユーロリーグ優勝とMVPを引っ提げてNBAに来た彼は挫折を知らない。NBAで新人王に輝いた時、それを喜ぶのではなくオールNBAから外れたことを悔しがったように、彼にとって毎年のステップアップは当たり前。1年ごとに「どれだけジャンプアップできたか」を自分自身に問う。

カイリー・アービングはそうではない。NBAキャリア13年目の32歳。自分の努力だけではこのリーグで成功を収められないことを自らの経験から理解している。レブロン・ジェームズを擁するキャバリアーズで優勝を勝ち取ったキャリア序盤には、今のドンチッチのように常に焦りを感じていた。キャブズを離れてセルティックスに新天地を求めたのも、それが理由だ。

だが、それはカイリーにとって困難な道だった。レブロン不在の若いチームでリーダーシップを発揮するつもりだったセルティックスでは彼のパーソナリティが受け入れられず、彼は自分の殻にこもるようになった。2年後に移籍したネッツでは、ケビン・デュラントと組んで注目を集めたが、優勝経験のある2人は心身を削って優勝を狙うより、自分たちのバスケを追求しながらキャリアを楽しみ、その先に優勝があればいいといった感があった。「何が何でも優勝したい」と願うジェームズ・ハーデンと齟齬が生まれ、それがネッツ解体に至ったのも自然な流れだった。

この間、カイリーは自分の殻に閉じこもり続けた。セルティックスでファンに嫌われ、ネッツではメディアを遠ざけ、社会情勢の混迷が深まるにつれて彼は『身内』以外との対話を拒否するようになり、その『身内』の幅をどんどん狭くしていった。昨シーズン途中にトレード要求をしてマーベリックスに移籍してきた時も、スタンスは変わらなかった。

彼が変わったのは今シーズンからだ。内面への旅で何が起きたのかは彼にしか分からない。それでも彼はドンチッチをエースとして立て、同時に2番手のエースとして勝つことの責任を背負い、チーム内で発言を増やすとともにメディアやファンとのコミュニケーションにも前向きになった。その結果が、セルティックスやネッツでは成し遂げられなかったNBAファイナル進出であり、NBAプレーヤーとしての大きなジャンプアップだった。

プレーオフを戦う中で、彼はボストンのファンと衝突した過去とも向き合い、過去の態度を謝罪し、様々な課題を乗り越えて強くなったセルティックスを称えた。それは彼に起きた変化の中でも最大のものだ。

「精神的な観点から見ると、他のどんなシーズンよりも今回の旅は楽しかった。自分の周りにいる多くの人々について、その素晴らしさを学んだ。だから毎日の練習や試合に行くのが楽しかった。そういう環境があれば、大きな目標を達成するのも簡単になる」

「僕はチームメートと一緒に成長した。クラブ全体がそうだった。勝って喜ぶだけじゃなく、負けから成長することを学んだ。バスケが大好きで、心から勝ちたいと思っているのに負けるのはキツい。でも、それに向き合わなきゃいけない。今まさにその状況に直面しているけど、やることは一つ。練習して来シーズンに備える。今回はシュートを外しても、次の試合では決められる。来シーズンはまた、新しいチャンピオン誕生のチャンスなんだ」

そして彼はセルティックスをこう称えた。「そうやってチャンピオンになったのがセルティックスだよ。僕は試合の最後に彼らと握手しながら、キツい負けを乗り越えて強くなった彼らの頑張りを思って感動していた。みんな個人的な評価を気にせず、ただチームとして強くまとまり、自分の役割を果たして勝つことに集中していた。マブスにとっては完璧なお手本だよ。彼らがトロフィーを掲げる姿は本当に素晴らしかった」

そして、セルティックスだけでなくマブスのチームメートにも心からの称賛を送る。「この1年、僕たちは新しいことをたくさん経験し、多くの成功を収めた。ファイナルでの敗退は悔しいけど、この悔しさを来シーズンに持ち込んではダメだ。最大の目標は達成できなかったけど、収穫はたくさんあるし、それが来シーズンに生きる。神のご加護があればまたプレーオフに進出し、最高のバスケを見せられるはずだ」

NBAファイナルの最後、セルティックスの健闘を称えた後のカイリーは、マブスのロッカールームへと続くトンネルの入り口でチームメートとスタッフを待ち、一人ずつにハグをして言葉を掛けた。敵対的なセルティックスファンの中に身を置くことになるが、それを気にしないカイリーは紛れもなくリーダーシップを発揮しており、自分の殻に閉じこもっていた時期にはない『誇らしい敗者の姿』を見せていた。

カイリーは笑顔でこう語った。「今回は優勝を逃した。頂点に立つことができず、一番下からまたやり直しだ。でも、それは刺激的な挑戦になる。僕は自分の仕事が大好きで、同じように自分の仕事を愛するヤツらと一緒だからね。そのことに感謝しているし、うれしい。これから長いオフが始まるけど、来シーズンの開幕がもう待ち遠しいよ」