吸い殻拾い13年で53万本 熊本市西区の矢邉さん(83) 熊本駅周辺の美化 もくもくとノートに記録

AI要約

熊本市の高齢の教師がJR熊本駅周辺で吸い殻を拾い続ける活動を続けており、13年10カ月で53万3833本を拾ったことが明らかになった。

教師は吸い殻を拾うことで環境美化に貢献し、拾った本数を記録している。吸い殻の本数は毎回減少傾向にあり、環境保護への思いが伺える。

地元の人々から感謝されており、教師自身もごみ拾いが人との出会いや心身の健康に繋がると実感している。

吸い殻拾い13年で53万本 熊本市西区の矢邉さん(83) 熊本駅周辺の美化 もくもくとノートに記録

 14日までの13年10カ月の間に拾った、たばこの吸い殻は53万3833本-。通信制高校で財務会計を教える矢邉義興さん(83)=熊本市西区=は、JR熊本駅周辺のごみを拾いながら散歩するのが日課だ。拾った吸い殻の本数は毎回ノートに記録。ノートにびっしりと並ぶ数字の列は、矢邉さんの環境美化への思いの熱さを裏付ける。

 10日午前7時、熊本駅近くの県道。小雨の中、矢邉さんが市の指定ごみ袋を手に歩いていた。「こういうところによく落ちてますよ。車から捨てるんでしょう」。腰をかがめ、歩道と車道の間に落ちている吸い殻をトングでつまんだ。この日は97本を拾った。

 ノートには、ごみ拾いに関する新聞記事や小学生の投書の切り抜きとともに、一日に拾った吸い殻の本数がきちょうめんに記されている。

 鎮西高(中央区)などで40年以上、商業科の教諭として簿記やそろばんを教えた。今は志成館高等学院(同区)で非常勤講師として財務会計を教えている。

 拾った吸い殻を数えるのは「ボケ防止」と笑うが、数字が環境を美しく保つ効果を裏付ける。2010年に拾った吸い殻は一日平均140本ほどだったが、現在は一日100本ほどに減った。きれいな道には、ごみを捨てにくいからだ。

 ホテルの裏、歩道の側溝、建物の壁際…。物影に落ちている吸い殻ももくもくと拾う。そんな矢邉さんの活動に多くの人が感謝する。熊本駅構内タクシーの乗務員、田中義弘さん(55)は「朝からあいさつするとトングで応えてくれる。私たちの職場である熊本駅をきれいにしてくださって、本当に頭が下がる」。

 今後も矢邉さんのノートには吸い殻の本数が記され続ける。「ごみ拾いをしていると、運が開けたり人との出会いがあったりする。心と体の健康にも役立っている」。数字で表せない効果も実感している。(石井颯悟)