中也が描く「空の表現」紹介 記念館で企画展 直筆原稿、日記など34点【山口】

AI要約

山口市湯田温泉1丁目の中原中也記念館で、中也の詩作の重要なモチーフである空に着目した企画展「空の歌」が開催されている。

「さまざまな空」と題した展示では、中也が青空や曇り空、夜空をどのように表現しているかが探求されている。

空をテーマにした中也の詩から、彼の思いや技法に迫る展示であり、開館30周年記念事業の第1弾として注目を集めている。

中也が描く「空の表現」紹介 記念館で企画展 直筆原稿、日記など34点【山口】

 山口市湯田温泉1丁目の中原中也記念館(中原豊館長)で、中也(1907~37年)の詩作の重要なモチーフである空に着目した企画展「空の歌」が開かれている。イメージが膨らむパネルによる解説や直筆原稿、日記など計34点を通じて、空を表現する中也の技法や思いについて理解が深められる。来年2月11日まで。

 開館30周年記念事業の第1弾。これまでの企画展に比べて生涯や交友関係より、詩に焦点を当てて多数の作品を並べ、空に関する詩を四つの視点で解説している。

 「さまざまな空」と題して、中也が描く青空や曇り空、夜空を紹介し、観察眼の鋭さがうかがえるとした。詩作の出発点とも言われる「朝の歌」では、倦怠(けんたい)感や閉塞(へいそく)感を表現しつつ、最終連の「ひろごりて たひらかの空」で晴れた空をイメージさせ、開放感を与えている。

 空と幻想の関係に着目した展示では、代表作の一つ「曇天」を解説。空に揺れる黒い旗が理解しがたい不吉さや暗さを感じさせ、中也の宿命観が読み取れる。詩全文が書かれた曇り空を思わせる暗いパネルも見どころ。

 中也が第1詩集の題名案に「空の歌」を挙げていたことに着目した「空の歌を求めて」と題した展示もある。詩「いのちの声」では自身が求めるものは「空の歌、朝、高空に、鳴響く空の歌とでもいふのであらうか?」と問い掛ける。迷いの末にたどり着いた理想の境地が最終連の「ゆふがた、空の下で、身一点に感じられれば、万事に於て文句はないのだ」と鮮やかな夕空に託される。 この詩は第1詩集となった「山羊の歌」の最後の詩でもあり、中也の詩人として生きる決意が感じられる。

 中也が息子、文也へ抱いた思いを空の表現から読み解いたパネルに加え、印象的な空の表現を抜粋して列挙した展示もあり、中也の言葉の面白さも楽しめる。

 担当学芸員の原明子さんは「代表作から隠れた名作まで幅広く並べた。直筆資料も多数展示したので、中也の筆跡や創作過程に思いを巡らせて楽しめるのでは」と話している。

 時間は午前9時~午後5時(入館は4時半)。月曜休館。一般330円、18歳以下と70歳以上は無料。