キャンプのお供にも!100年の伝統技術でつくられた食材を美味しく焼き上げるフライパン。

AI要約

三暁のTSUCHIMEフライパンは、鞆の浦で作られる鉄製フライパンで、使いやすさと美味しさを両立している。

自由鍛造技術により特徴的な槌目が食材との接触を良くし、理想の焼き加減を実現する。

工場でのハイテクな製造と職人の手作業が融合したTSUCHIMEは、料理好きやキャンプ愛好家におすすめの逸品。

キャンプのお供にも!100年の伝統技術でつくられた食材を美味しく焼き上げるフライパン。

手土産の番外編第3弾は、広島県福山市の瀬戸内海に面した風光明媚(ふうこうめいび)な観光地、鞆(とも)の浦にある鉄鋼メーカー「三暁」のフライパン。手土産には“消えもの”推奨派だが、趣味嗜好をよく知る知人には、長く愛用してもらえるものを選ぶこともある。今回の「TSUCHIME」は、そんな私がほれ込んだ鉄製のフライパンだ。

鉄製は料理をおいしくすると定評はあるものの、錆びたり、重かったりで私には少々難易度が高め。ところがこの「TSUCHIME」はそれを難なくクリアしてきた。パン部寸法20cmという小ぶりなサイズで、軽くて使い勝手がいい。取っ手は取り外しタイプで、フライパンを上下左右にあおることはできないが、じゅうじゅうという鉄製特有の音に耳を傾けつつ、好みの焼き加減に到達したら、取っ手を付けて火から下ろす。

厚さ3.2mmという鉄板の蓄熱性の高さによって見事な焼き目がつき、驚くほどおいしく焼ける。肉も魚も、普段よく焼く目玉焼きも味わいは別格。“外はカリッと中はジューシー”を実現してくれるのだ。知人は、これでパンをよく焼くらしいのだが、早くておいしくて手放せないと言っていた。

TSUCHIMEは、1000℃以上に熱した鉄板を、職人が何度も何度もハンマーでたたいてフリーハンドで形を整えていく自由鍛造と呼ばれる技によって作られる。商品名にもなっている槌目(つちめ)とは、たたいたときにできる凹凸のことを指すのだが、手作業ゆえに同じものは存在せず、それぞれに表情豊かだ。しかも、その凹凸が食材との接触面積を減らして、油溜まりを作り、これによってこげつきを避けながら食材を美味しく焼き上げるのだ。

しかも鍛造成型後に熱処理が施されているから、錆びにくく、使い始める前の慣らし運転としての焼き入れも不要。すぐに使えるこの気軽さも、贈り物にはありがたい。自宅のガスコンロはもちろんだが、一番のおすすめはキャンプのお供。使うほどに油がなじみ、表面に油の層が形成されて、いい具合に黒光りしてくる。その無骨なルックスがワイルドな環境によく似合う。

三暁は1951年に鍛冶屋として鞆の浦で創業したが、時代に合わせてものづくりを高度化させて、現在では最新鋭のロボットを用いた精密加工技術を軸にした金属加工の企業へと進化している。その一方で、2016年に同じ鉄鋼団地内で、高齢化のために廃業するという錨(いかり)製造工場を職人ごと引き継いだ。その工場が持っていた、全国的にもわずかしか残っていない自由鍛造の技術を活かし、時代に合わせたアウトドアブランドcocinero(コシネロ)を立ち上げた。その製品のひとつがTSUCHIME。1世紀以上昔から鞆の浦に根付く技術をなんとか残していきたい。そんな熱い思いが作り上げた逸品だ。ハイテクとローテクの両輪を持つ三暁のフライパンは、料理好きやキャンパー、ものづくりマニアの心をつかんで離さないに違いない。

三暁

広島県福山市鞆町後地26-179

定休日/土曜・日曜・祝日など

価格/TSUCHIMEラウンド型1万2500円、TSUCHIMEスクエア型1万2500円 ※税込み・送料別

問/084-983-5551

https://www.cocinero.jp/

熊野由佳

ライター&エディター。徳島県出身。外資系ジュエリーブランドのPRを10年以上経験した後にフリーランスに。旅、食、ときどきファッションをテーマに、雑誌やWebに執筆中。無類の食べもの好きであり、B級グルメからミシュラン星付きまで、自分の納得した店だけを紹介する「実食主義」を貫いている。酒好きが高じて「唎酒師(ききさけし)」を取得したが、おいしいワインの探索にも余念がない。