トロッコ列車で楽しむ初夏の北海道、丘一面を紫色に染めるラベンダー畑を「富良野・美瑛ノロッコ号」の車窓から鑑賞

AI要約

北海道の初夏を楽しむためには、梅雨から離れて北海道へ足を運ぶのがおすすめ。

観光列車「富良野・美瑛ノロッコ号」がラベンダー畑や北海道の景勝地を巡る人気の観光スポットとなっている。

トロッコ列車のゆっくりとした走行スタイルで、北海道の絶景を楽しむことができる。DE15形の機関車や車内のレトロな雰囲気も特徴的。

ラベンダー畑駅からファーム富田までの散策や美しい景色を楽しんだり、写真撮影スポットとしても人気のスポット。

 文・写真=山﨑友也 取材協力=春燈社(小西眞由美)

■ トロッコ列車で初夏の北海道を堪能

 じめじめとしたうっとうしい梅雨の時期は、とかく出かけるのもおっくうになりがちだ。そんなときは梅雨前線から一気に離れ、北海道へと足を伸ばしてみてはいかがだろうか。しかもこの時期にピッタリの観光列車が道央を走っている。それが「富良野・美瑛ノロッコ号」だ。今年も6月8日から運行を開始しており、地域に夏の訪れを告げている。

 さて、地名を聞いてピンときた人も多いだろうが、富良野や美瑛周辺では6月の下旬から早咲きのラベンダーが咲き始め、7月中旬から下旬にかけてピークを迎える。丘一面を紫色に染め、爽やかな甘い香りを放ちながらゆらゆらと風と戯れるようすに人々は魅了され、心や体も癒される。そんなラベンダーを雄大な北の大地とともに鑑賞できるとあって、列車は国内外を問わず多くの観光客で連日賑わいをみせている。

 「富良野・美瑛ノロッコ号」が誕生したのは1998年で、すでに四半世紀以上も走る北海道を代表する観光列車だ。車両は国鉄時代に造られた50系を改造した510系という客車で、窓を大きくガラスをなくしたトロッコ車両。座席は木目調で6人掛けのボックスシートと窓の方を向いた2名掛けのシートが並び、電球の照明や骨組みむき出しの天井とともに、レトロな雰囲気にあふれている。

 そもそもトロッコとは屋根のない貨車のことだが、50系は以前は普通列車に使用されていたため、車内は広く乗り心地も良いのがこの列車の特徴だ。

 牽引する機関車はカラフルに化粧を施されたDE15形。ラベンダー畑と春小麦畑をイメージしたという塗装は沿線の風景によくマッチしている。

■ 車窓からゆったりと絶景体験

 ところで愛称の「ノロッコ」とは「ノロノロと走る」と「トロッコ列車」を掛けあわせた造語である。文字通り速度を落としてゆっくりと走るため、通常の列車より約30分も時間がかかってしまうが、その代わりパッチワークのように広がる丘や荒々しい十勝岳連峰、広大な盆地にラベンダー畑といった北海道を代表するような景色を余すところなく堪能できる。そのなかでも見どころと呼ばれる美瑛の赤屋根の家や北星山ラベンダー園付近では、さらに減速するというサービスも。

 走行する区間は列車によって一部異なっているので注意が必要だ。1・6号は旭川~富良野間を走り、2~5号は美瑛~富良野間を結んでいる。今年の運転日は9月23日までの土日祝日を中心に、6月15日から8月12日までの毎日だ。

 列車に乗車するのであれば、やはり旭川から1号に乗車することをおすすめする。旭川の市街地を抜けて段々と自然が豊かになり、眼前に壁のようにそびえる山々を眺めていると、北海道を旅していることが実感でき高揚感もいっそう増すだろう。

 そして前述した景勝を満喫したら、ラベンダー畑駅で下車しよう。この駅は普段は時刻表に載っていないのだが、この時期のみ営業する臨時駅。そこから歩くこと約7分。ラベンダー畑で有名なファーム富田に入園したら、坂はきついが迷わずトラディショナルラベンダー畑を目指してみよう。

 畑の上段近くにたどり着いて後ろを振り返ってみると、足元から下に伸びる美しい紫色の絨毯の向こうに十勝岳を始めとする山々が壮大に連なっている。これを絶景と呼ばずして何と呼ぼう。しかもその中心には先ほど乗車したトロッコ列車の姿もみえるではないか。その素晴らしさから国鉄のカレンダーにも掲載されたことがきっかけで、この農園が全国に知れ渡ることとなったのである。

 ただ、ちょっと南に下がったところにある彩りの畑のほうが色彩にあふれているので、写真を撮るうえではこちらのほうが個人的には好みかな!