多機能空調家電のナゾ…機能ごとに適応床面積がバラバラなワケは?(多賀一晃/生活家電.com)

AI要約

多機能空調家電は、加湿機能付き空気清浄機のように複数の機能を1つに統合した家電であり、その適応床面積には注意が必要。

多機能空調家電は、複数の機能を同じ床面積で提供することはコストがかさむため、メーカーが各機能ごとに異なる適応床面積を設定することが一般的。

適応床面積を合わせることは課題が多いが、ユーザーは単一の範囲で使えると期待しているため、メーカーは機能が十分でなくても適切な使い方を提供すべきである。

多機能空調家電のナゾ…機能ごとに適応床面積がバラバラなワケは?(多賀一晃/生活家電.com)

【家電のことはオイラに聞いて!】#53

 多機能空調家電とは加湿機能付き空気清浄機のように、加湿器と空気清浄機など別々の空調家電を1つの家電に搭載した家電です。家が狭い日本では当然、人気が出るわけですが、この多機能家電には問題もあります。

 今回は適応床面積の観点から取り上げましょう。適応床面積とは、どれくらいの範囲で効果があるかを示す、空調家電で最も重要な能力のひとつです。「20畳」と表記されていれば、メーカーは20畳までその機能が効果を発揮すると言っているわけです。

 ところが、カタログをよく見ると、機能ごとに適応床面積がバラバラなのです。例えば、A(空気清浄機)、B(加湿器)、C(除湿機)を一体化するとします。Cをベースにした場合は、Cを最後にして、ABC(空気清浄 加湿・除湿機)もしくはBAC(加湿 空気清浄除湿機)と説明しています。

 Cの適応床面積が20畳の場合、多くの家電は、その他の機能が力足らずです。A、Bの適応床面積は10畳程度、もしくはそれ以下だったりします。その機器の公称適応床面積はメイン機能であるCの意味であり、AやBの低い値は、誰かに聞かれた時だけ開示されることが多いのです。

■全機能をメインと同じ畳数にするとコスト増

 メーカーがこのように対応してきた理由は、全機能をメインと同じ畳数にすると大変なコストがかかるためです。メーカーは、3台分の機能が搭載されているのだから、3台分の値を多機能モデルに付けたい。しかし、それは許されません。ユーザーからすれば1台は1台だからです。トヨタのハイブリッド車はエンジンとモーターを搭載していますが、クルマ2台分の値段で売れません。

 このような多機能モデルの元祖は加湿機能付き空気清浄機です。加湿器を空気清浄機に搭載した理由はいくつかありますが、ひとつは加湿器が冬に使う季節家電だったからです。

 今でこそ暖房にエアコンが利用されるようになりましたが、昭和の時代の「暖」はこたつが当たり前。加えて石油ストーブでした。日本の住宅事情から「空気清浄機」「加湿器」は別々に置くことができず、合体したのです。

 実は、この合体、当時は業界的にはホントにやるの? という空気でした。加湿器は水を使うので、最もばい菌が発生しやすい空調家電だからです。一方、空気清浄機は部屋の中のばい菌を集めるので、自家汚染の可能性があったのです。ですので適応床面積より、メーカーには対応すべき課題が多くそちらが優先されたのです。

 適応床面積を合わせるのは、メーカーとしては、「何を今更」かもしれません。ですが、ユーザーの多くは、同じ範囲で使えると思っているはずです。サブ機能だからいいでしょ? と開き直っていい話ではないはずです。メーカーには、少なくとも、能力の足りない機能でも、うまく使えるノウハウを開示してもらいたいものです。

(多賀一晃/生活家電.com主宰)