有名人であることは罪? デヴィッド・ボウイの言葉を振り返る。

AI要約

デヴィッド・ボウイが有名になったことでのメリットやデメリット、ファンの心情について言及。

有名人たちのプライバシーに対する姿勢や日本と海外の違いについて述べられている。

セレブリティが写真撮影やSNSの普及によって直面する新たな問題について考察。

有名人であることは罪? デヴィッド・ボウイの言葉を振り返る。

文筆家・村上香住子が胸をときめかせた言葉を綴る連載「La boîte à bijoux pour les mots précieuxーことばの宝石箱」。今回は"地球に落ちてきた"ロックスターにして俳優、デヴィッド・ボウイの言葉をご紹介。

「8時に2名、名前? ボウイ、そう、デヴィッド・ボウイだよ」

そんな電話がかかってきたら、レストランの人は肝を潰すだろう。海外には芸能人や政治家用の個室はないけど、もしあるとしたら、そこが塞がっていたら大慌てになるだろう。もしかしたらこの言葉は、いわゆる「切り抜き」かもしれない。またはジョークのような気もする。この後に言葉が続いていたのではないか。

「それどころかストーカーもいるし、待ち伏せもあるし、有名人になったら碌なことはないよ」と。そんな続きを想像してしまう。

だけどそうした重苦しいダークなことは一切言わないのがボウイなので、やはりレストランの予約が取れるというご褒美、というのは本当だろうし、実際に自分で電話をしていたようだ。最近のように偽有名人になりすまし、犯罪まがいのことをされたり、虚偽の情報で、ネット炎上が起きたり、ご褒美どころか、ボウイが酷い目に遭って、散々な体験をせずに済んでよかった、というのがファンの心境といってもいい。

パリにいた頃、有名人たちとカフェでインタビューをしたり、夕食に行ったりしたが、日本のように個室を要求したり、ほかの客に見えないように背中を向けて座ったりする人は、ひとりもいなかった。むしろ他の客に混じってさりげなく食事をしていたし、ファンもプライベートの時は迷惑をかけないように抑えているようにも見えた。

隠れようとすればするだけ、自分は芸能人です、といっているようにも見えるのだが、それが日本でのマナーのようだ。ある日本の結構有名女優と夕食に出かけた時、入口から入ってくる客に見えないように、入口の真後ろに座ったり、それが直角でなくまたずらしたり、大変そうだな、と思ったものだ。とはいえいまの時代、どこで写真を撮られてネットにアップされるか分からない。セレブもそれなりの苦労があるのかもしれない。