『私のトナカイちゃん』は「性的同意」をはじめとする問題に真摯に向き合っている

AI要約

4月11日に配信が始まった英国のNetflixオリジナルシリーズ『私のトナカイちゃん』が、ストーカー被害に遭った男性の実体験を元にした高評価ドラマである。

主人公の青年芸人ドニー・ダンが巨漢の女性マーサからストーカー行為を受ける展開と、彼女のエスカレートする行動が物語の中心となっている。

原作は実話を基にした舞台からのドラマ化で、ダークで毒気のあるテイストや痛々しいユーモアが特徴で、時には不快な内容もある。

『私のトナカイちゃん』は「性的同意」をはじめとする問題に真摯に向き合っている

数多のコンテンツのなかから、いま見るべき映画・海外ドラマを紹介する連載「いまこの作品を観るべき理由」。今月のおすすめは、ストーカー被害に遭った男性の実体験を元にした高評価ドラマ『私のトナカイちゃん』だ。

4月11日に配信が始まった英国のNetflixオリジナルシリーズ『私のトナカイちゃん』。この奇妙な名前の小規模な作品が本国はもとより、アメリカでも異例のヒットを記録している。Netflixが独自に出しているチャートでは初登場5位から翌週は1位に上り詰め、3週目に入った現在も1位をキープ。批評家にも絶賛されている。

主人公は、成功の糸口を必死に手にしようともがき苦しむ芸人の青年ドニー・ダン(リチャード・ガッド)。働いているバーで、明らかに気落ちしている巨漢の女性マーサ(ジェシカ・カニング)に同情し、紅茶を無料で提供したことから、数ヶ月にわたるストーカー行為を受ける羽目になる。

マーサは自身を有能な弁護士であると称して武勇伝をまくし立てるが、明らかに彼女の人生は真逆なのだろうと思わせる。かなりエキセントリックだがどこかで共感を覚えるドニーの心の隙を突くように、情緒不安定なマーサの常軌を逸した言動はエスカレートしていく。

原作は、スコットランドの作家でコメディアンのリチャード・ガッドが自らの体験を基にした戯曲だ。一人芝居として高く評価された舞台を経てドラマ化での国際的な大成功は、フィービー=ウォーラー・ブリッジの『フリーバッグ』を思わせる。実際にダークで毒気のあるテイストや痛々しいユーモアなど作風に通じるものがある。

踏み込んだ話をするにはストーリーの一部を明かす必要があるため、興味がある人はまず作品を観て欲しい。約4時間程度で観終わるので手軽ではある。しかし、その内容は性的な描写を含む非常にショッキングなもので、時に不快ですらあることが前提である。

始まりから3話目までは、『YOU ー君がすべてー』あたりに通じるサイコスリラーと言ってもいい。