もしかしたら伝説の作品になっていた!? 名作の予感があったが…“ジャンプ黄金期”「早期終了漫画」

AI要約

1980年代~90年代にかけて、数々の伝説的作品が軒を連ねた『週刊少年ジャンプ』(集英社)の「ジャンプ黄金期」。その中でも、『魔神竜バリオン』は巨大ロボット漫画として独自の世界観を持ち、多くの読者を惹きつけた。

一方、『メタルK』は異色のテイストとグロテスクな描写で熱狂的な人気を誇る作品であり、当時のジャンプ作品とは一線を画していた。

両作品は短期間の連載に終わったが、そのインパクトと独自性で多くのファンを魅了し続けている。

もしかしたら伝説の作品になっていた!? 名作の予感があったが…“ジャンプ黄金期”「早期終了漫画」

 1980年代~90年代にかけて、数々の伝説的作品が軒を連ねた『週刊少年ジャンプ』(集英社)の「ジャンプ黄金期」。なかには名作でありながらほかの作品たちに埋もれてしまい、早期に終了となってしまった作品も多い。その圧倒的なポテンシャルで当時のファンを強く惹きつけた作品たちを見ていこう。

 数々の名作漫画が連載され、読者をおおいに盛り上がらせた「ジャンプ黄金期」だが、一方で当時デビューをはたした新人漫画家にとっては、非常に過酷な時代だったといわざるをえない。

 そんな時代の荒波のなかで奮闘を続けた漫画家といえば、1986年に『サスケ忍伝』でデビューをした黒岩よしひろさんではないだろうか。

 数々の作品を手掛けた漫画家だが、なかでも1987年から連載された『魔神竜バリオン』は、これまでのジャンプ作品とは一風変わったテイストの作品で、多くの読者を惹きつけた。

 本作は主人公の少年・志羽竜樹が巨大ロボット・バリオンに乗り込み敵と戦っていく、当時のジャンプ作品では珍しい“巨大ロボット漫画”だ。作中に登場するロボットのかっこ良さ、メカの動力に関する練り込まれた設定の数々など、ロボット好きにとってはたまらない要素が凝縮された一作である。

 悪の組織と戦う勧善懲悪な展開をベースにしつつも、敵サイドの理想や目標もしっかりと描かれており、それぞれが戦いに身を投じる理由を明確化した深みのあるストーリーが魅力だった。

 美形の敵や可愛いサポート役といったキャラクターも多数登場し、これからの展開が期待されていたが、惜しまれながらも11週で連載終了となってしまった。

 しかし、その独特の世界観や設定は多くの読者の記憶に残っており、いまもなおリメイクやアニメ化といったメディア展開を望む声も少なくない。最新の技術を駆使し活躍する、躍動感あふれるバリオンの勇姿を見てみたいものである。

 「ジャンプ黄金期」当時は“友情・努力・勝利”という、ジャンプのスローガンを体現した硬派な作品が多かった印象だが、個性的な作風で読者にインパクトを与えた漫画も登場している。

 なかでも1986年から連載された巻来功士さんの『メタルK』は、あまりにも強烈な描写の数々で、いまもなお熱狂的な人気を誇る一作だ。

 両親を殺害され、自身も生きたまま火をつけられた主人公・冥神慶子は、サイボーグとして蘇ったことで、かつての婚約者とその影に潜んでいた組織に復讐すべく、戦いへと身を投じていく。

 主人公が女性であったり、目的が敵組織への復讐劇であったりと、当時の少年漫画とはなにもかもが真逆なテイストだが、加えて作中に登場する壮絶な描写の数々も実に特徴的だった。

 主人公の皮膚が溶け骨格があらわになるなどは序の口で、硫酸によって溶かされ殺害される敵、マネキンに突き刺さった生首、ウイルスによってミイラになる人間……と、かなりグロテスクな描写が終始展開されていく。

 やはり当時のジャンプでこれらの作風を貫くのは難しかったのか、本作は10週で連載終了となってしまった。しかし、その強烈極まりない作風は当時の読者に凄まじいインパクトを残し、知る人ぞ知る名作として語り継がれている。

 また、のちに作者である巻来さんが、自伝的マンガ『連載終了!』のなかで連載当時の背景や裏話をつづっているのも、実に興味深い点だろう。