「地面師たち」詐欺集団もサラリーマンも内幕リアルに 〝裏道歩く〟大根仁監督

AI要約

大根仁監督が配信ドラマに初登場。Netflixの「地面師たち」は土地取引詐欺師グループの活躍を描く。

地面師グループが大手デベロッパーを巧妙に騙す展開や企業内部の複雑な関係が描かれる。

犯罪ドラマと企業ものが融合した展開で、組織内の力学や人間関係がリアルに描かれる。

「地面師たち」詐欺集団もサラリーマンも内幕リアルに 〝裏道歩く〟大根仁監督

映画なら「モテキ」「バクマン。」、ドラマでは「いだてん 東京オリムピック噺」「エルピス 希望、あるいは災い」……。ヒット作を連発する大根仁監督が、配信ドラマに初登場。Netflixの「地面師たち」は「企業もの+犯罪ドラマ」だ。

2019年に発行された新庄耕の同名小説を原作に、「地面師」と呼ばれる土地取引詐欺師グループの暗躍を描く。「地面師」は、17年に発覚した積水ハウスの巨額詐欺事件を契機に広く知られるようになり、小説もこの事件を下敷きにしている。大根監督は事件の舞台となった土地を知っていたという。「自転車で仕事場に向かう途中にあって、事件には関心を持っていた」と話す。

ハリソン山中(豊川悦司)率いる地面師グループが、大手デベロッパーの石洋ハウスに東京・高輪にある寺の駐車場の土地を巡る虚偽の売買取引を持ちかけ、100億円をだまし取ろうとする。地面師グループでは、交渉役の辻本(綾野剛)、情報を集める図面師・竹下(北村一輝)、偽造担当のニンベン師・長井(染谷将太)、ニセ地主役を用意する手配師・麗子(小池栄子)らが細かく分担を分けて準備を進めてゆく。

デフォルメはしてもできるだけウソのない描写を目指し、原作に加え、事件の報告書なども参照しながら脚本を書いた。多くの人に話も聞いた。「不動産関係者、警察、司法書士、弁護士……、〝監修〟の数がえげつなかった」と笑う。土地の売買契約を結ぶ場面、慎重な司法書士に対して企業側が契約を急がせる場面で、司法書士が「ぼくにもプライドがある」と色をなして反論するセリフがある。脚本にはなかったという。土地取引で最終的に相手の真偽を判断するのは司法書士で「監修の方が『ここで一矢報いたい』というようなことをおっしゃって」。アイデアを取り入れた。

犯罪ドラマの一方で、企業の内幕ものでもある。石洋ハウスの開発事業部長、青柳(山本耕史)は、社内の派閥争いで先んじるため大型案件を血眼で探している。地面師が仕掛けた架空の土地取引に飛びつき、慎重な手続きを求める周囲を振り切って、暴走気味に契約を急ぐ。社内稟議(りんぎ)を通すための根回しや役員会での反対派閥との駆け引きなど、組織内の力学関係が生々しい。

「デベロッパーにとって土地は奪い合い。東京など、ちょっとでも空いてる土地があったら他社に取られる前に行けという強迫観念や、地主の機嫌を損ねたくないという心理も働く」。サラリーマンなら異業種でもヒヤヒヤするのではないか。「企業ものは今までやったことがなかったので。伊丹十三監督の映画みたいな職業ものは、面白いですよね」