奈緒「つらい思いをした心の痛みに、性別の差はない」 映画『先生の白い嘘』に主演

AI要約

映画『先生の白い嘘』は奈緒さん主演で、男女の性の不平等や矛盾した感情を探る作品。

撮影中は奈緒さんにとってつらい時期であり、苦悩しながら演じていた。

共演者や撮影現場が奈緒さんを支え、特に三吉彩花さんとの関係が重要であった。

奈緒「つらい思いをした心の痛みに、性別の差はない」 映画『先生の白い嘘』に主演

俳優の奈緒さんが主演する映画『先生の白い嘘』が、7月5日(金)から公開されています。男女の間に横たわる「性の不平等」や、自身の性に対する矛盾した感情に真正面から切り込む、センシティブなテーマの本作。男女の性差に翻弄され葛藤する主人公の高校教師・美鈴を体当たりで演じた奈緒さんに、役に向き合った思いや、少しでも健やかな世界に近づくために大切にしたいことを伺いました。

――鳥飼茜さん原作の同名漫画を映画化した本作。奈緒さん演じる高校教師の美鈴は、親友の婚約者との関係を隠しながら教壇に立っている――。男女の「性の不条理」をテーマにしたシリアスな作品ですが、撮影中は、どのようにご自身の気持ちを保っていたのでしょうか。

奈緒さん(以下、奈緒): すごく正直に話すと、「自分の力で気持ちを保って、撮影を乗り越えた!」という感覚は、この作品に関してはまったく持てていませんでした。

この作品に向き合う時間は、私にはとてもつらいものでした。ずっと地方で撮影をしていたこともあり、撮影場所とホテルとの往復だったので、作品のテーマと自分の生活を切り離すのに難しい時間が続いて……。とても悩み続けた記憶があります。

――奈緒さんにとって、最後まで撮影を続けられる「支え」になったのは?

奈緒: 今回の現場に「これが初めての映画の撮影現場」というスタッフさんがいたんです。そして、私が演じた美鈴の教え子である、新妻役の猪狩蒼弥さんも、映画への単独出演は初めてと聞きました。

『先生の白い嘘』の撮影現場次第で、彼らにとっての「映画の現場」に対する印象が決まる。そのことが、私のなかでは大きな支えでした。「この現場が少しでも良いものになればいいな」と意識しながら演じていました。

――美鈴役を演じる上では、大きな覚悟やプレッシャーがあったかと思いますが、精神を支える土台をつくることができたんですね。奈緒さんから見て、美鈴は、どんな女性に映っていましたか。

奈緒: 「美鈴の身に起こった出来事が、もし違うものだったとしたら、彼女はどんな人だったんだろう」。そんなことを、撮影に入る前に想像しました。彼女の心には、「善良でありたい」といった思いもあれば、それに反するような……たとえば、親友の美奈子に対しては、あこがれと、どこか自分よりも下に見るような気持ちが共存していました。負の感情と葛藤する部分もあって、とても人間らしいと感じました。

――共演者の方たちとの印象的なエピソードがありましたら教えてください。

奈緒: 美奈子役の三吉彩花さんは、私にとって心強い存在でした。一緒に撮影する日数はあまり多くありませんでしたが、ご飯を食べに行って、積極的に話す時間を持てました。この作品や現場のことなどについて、「三吉ちゃんになら言える!」と思っていましたね。

物語の終盤、病室での美鈴と美奈子のシーンは、とくに、彼女と重ねてきた時間があったからこそ成り立つ空気感があったと思います。相手が三吉ちゃんだったから、あのシーンを乗り越えられましたし、次の重要な場面にも自分の気持ちを繋げていけました。彼女には本当に感謝しています。

――美鈴と美奈子の友情が感じ取れる大切なシーンでしたね。一方、美奈子の婚約者で、美鈴に男女の不平等さの意識を植え付けた人物でもある早藤役の風間俊介さん、そして、猪狩さんとの関係性はいかがでしたか?

奈緒: 風間さんとは、役柄もあって、あまりお話をする機会がなかったんです。でも、すごく寒いなか、雨に濡れるシーンの撮影をしていた日に、風間さんが何も言わずに、その場で入浴剤を差し入れしてくださったんです。風間さんの優しさを受け取って、あたたかい気持ちになりました。

そして猪狩くんは、もう、なんて言うんでしょう……。希望のような、太陽のような存在でした。彼がいてくれたこと自体が、私のなかでは大きな光でした。