情報教育の現場から最新の知見が集まる――New Education Expo 2024

AI要約

教育関係者向けの総合展示会「New Education Expo 2024 大阪」が2024年6月14日と15日に開催され、最新の情報教育に関するセミナーや取り組みが紹介された。

セミナーではメディアリテラシー教育の重要性や取り組みについて深く議論され、岡山県立岡山南高等学校のNIE教育やAI時代のメディアリテラシー授業の事例が紹介された。

さらに、日本新聞協会の取り組みやメディア・リテラシーに関する専門家の議論も行われ、メディアリテラシー教育の重要性が改めて強調された。

 教育関係者向けの総合展示会「New Education Expo 2024 大阪」が2024年6月14日と15日に開催された。情報教育に関する最新の知見を報告するセミナーが複数開催され、学校や研究所などの教育機関の現場から、最新の知見が多く集まった。

 セミナー「デジタル・シティズンシップとメディアリテラシー教育を考える」では、メディアリテラシー教育の現場に立つ人たちを招き、メディアリテラシー教育のあり方について議論を深めた。コーディネーターを務めた法政大学 教授・総合情報センター 所長の坂本旬氏は、「デジタル時代の偽・誤情報の問題が学校教育に大きな影響を与えている。情報の信頼性を見極めるためにどんな教育が必要か」と、メディアリテラシー教育のあり方について問題提起した。

 メディアリテラシー教育の最新事例として、岡山県立岡山南高等学校の取り組みが紹介された。同校は新聞を学校教材として活用するNIE(Newspaper in Education)教育に力を入れている。同校教諭の畝岡睦実氏は、その日の新聞の1面を校内に張り出して意見を付箋で付けられる『NIE掲示板』の運用や、震災のニュースが各メディアでどのように採り上げられたかを比較検討する授業など、活動の様子を紹介した。

 続いて同校の生徒、坪井彩佳さんが「AI時代のメディアリテラシー『炎上』を読み解く」と題して授業の様子を発表した。SNSなどで起こった著名人の発言を発端とする炎上の事案を教材とし、(1)何が原因で炎上したのかを分析し(2)どう書き込めば回避ができたのか修正案を考える、という内容だ。

 炎上の分析には「国語の授業で教材や新聞記事の吟味によく使う『三角ロジック』を用いた」(坪井さん)。炎上した発言の「主張」を整理し、その「理由付け」と「前提」を確認すると、前提の部分の提示がなかったせいで、誤解を招いたという炎上の原因が見えてくる。授業では炎上コメントの修正案までを考える。

 この授業を通して、「非の打ち所がないと思っていた教科書の文章でも、ロジックを読み取ると矛盾点があった」と坪井さん。全ての文章を読むときには、根拠の正しさや論理の妥当性などを確かめ読み進めることが大事だと分かったという。

 次に登壇したのは日本新聞協会事務局次長の尾高泉氏。館長を務める日本新聞博物館(ニュースパーク)によるデジタルシティズンシップ教育への取り組みを紹介した。

 新聞博物館は日本初の日刊紙「横浜毎日新聞」が創刊された横浜にあり、情報を見極める力の大切さと新聞・ジャーナリズムの役割を伝える博物館だ。企画展の開催のほか、教育事業にも力を入れており、神奈川県の教員や学校司書のボランティアチームによる、全国の学校の授業に貸し出すための新聞や図書の資料である、通称「新博キット」を用意しているという。また、2024年8月に開催されるNIE全国大会京都大会では、新聞のジェンダー表現に関する授業の取り組みを紹介する予定だ。

 後半は、FCTメディア・リテラシー研究所所長の西村寿子氏が「クリティカルなメディア・リテラシーへ」と題し、メディアリテラシーとは何なのか、その定義と学び方を改めて紹介。続いて滋賀文教短期大学 専任講師の有山裕美子氏がマイクを握り、西村氏と対を成す形で、デジタルシティズンシップとは何かについて議論を深めた。