元キャストが語った「ディズニーランドに“ネズミ”が出た」ときの対処法

AI要約

ディズニーランドのキャストが嘔吐処理や動物の死がい処理に迫るエピソードを紹介。

嘔吐や動物の死がい処理がディズニーランドのキャストによる日常業務であることが明らかに。

イレギュラー対応として興奮したゲストからの鼻血処理や、動物の死がい処理なども紹介。

元キャストが語った「ディズニーランドに“ネズミ”が出た」ときの対処法

〈「間違いない“アレ”だ」ディズニーランドのキャストが絶句した「お客様のヤバすぎる落とし物」〉 から続く

 ミッキーマウスでおなじみのディズニーランド。もしそこに“ネズミ”の死骸が見つかった場合、従業員たちはどう対応するのか…? ディズニーランドのキャストの表と裏を描いた、笠原一郎氏の書籍 『ディズニーキャストざわざわ日記――“夢の国″にも××××ご指示のとおり掃除します』(三五館シンシャ) より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

 ゲストは嘔吐する場所を選ばない。とくに揺れ動くアトラクションは嘔吐を誘引しやすい。

 アトラクションの中での嘔吐処理もまたわれわれカストーディアルキャストの仕事である。

 その日、私は「ジャングルクルーズ」のボート上での嘔吐処理を依頼された。

 ゲストがひとりもいない客船に私がひとりで乗り込む。

「ジャングルクルーズ」が貸し切り状態で、人によっては貴重な体験かもしれないが、私の目の前にはこんもりとした吐瀉物が残されている。気分が盛りあがることはない。

 船が一周するあいだに吐瀉物をきれいに取り除き、消毒し、その後始末まですべてを終わらせなければならない。それが私に課せられたミッションなのだ。

 すぐに取りかかるが、大きく揺れ動くボート上での下を向いての作業で早々に気分が悪くなってくる。

 とはいえ、タイムリミットは10分。休んでいるヒマはない。私はゾウやワニ、カバたちにわき目もふらずに清掃作業を続けた。

 そして、ちょうど一周が終わろうとするギリギリのところで、無事に後片付けを済ませることができた。

 揺れる船内での下を向いての急ぎ作業はもう少しで私に新しい吐瀉物を作らせるところであった。

 楽しかった体験もある。

「イッツ・ア・スモールワールド」のボートでの嘔吐処理だった。

 吐瀉物の量が少なかったのと、「ジャングルクルーズ」ほど揺れが大きくないためか、下を向いての作業も苦にならず、ものの1~2分で処理を終えた。

 ここでもゲストは乗せず、私ひとりでコースを一周したのだが、すぐに処理を終え余裕のあった私はゴール地点に戻るとき、ボートの中から並んで待っているゲストに向かって手を振った。

 すると並んでいるゲストみんながいっせいにこちらに向かって手を振り返してくれた。

 老若男女がみな笑顔でこちらに手を振っているその光景は壮観で、私にしか経験のできない貴重な体験となった。

 そのほかのイレギュラー対応としては、血液処理や動物の死がい処理がある。血液処理というのは、ほとんど鼻血である。興奮のためか、鼻血を出すゲストも多い。地面に飛び散っている血ほど“夢の国”に似つかわしくないものはなく、これまた迅速な処理が求められる。

 園内には、動物の死がいもたまにある。

 私が実際に処理したものでは、スズメ、ムクドリ、ハトなど鳥類がほとんどである。

 東京ディズニーランドにはカラスがいないという都市伝説があるそうなのだが、実際にはカラスはたくさん生息している。

 ネズミの死がいを処理したこともある。基本的には嘔吐処理の場合と同様だが、処理する前に必ずSV(運営本部)に連絡を入れる。

 死がいを入れたゴミ袋にはわかるように「ネズミの死がい」とメモ紙を貼り、コンテナの所定の場所に置く。処理後は、所定の専用用紙に記入し、SVに提出する。ネズミだからといって、手厚く葬られることはない。