累計販売台数は約2万台!スーパー銭湯や空港、新幹線駅、コインランドリー、米軍基地など…日本中で活躍する「あんま王」のビジネス戦略とは?

AI要約

あんま王は、業務用に特化したマッサージチェアとして安全性と耐久性に優れ、施設側からのニーズに合わせた設計がされている。

施設の種類によっては場所選びが重要で、成功事例を示すことで新たな施設にも設置される文化を広げている。

今後はキャッシュレス決済やネットワーク管理の導入、さらには海外展開も視野に入れて市場拡大を目指す展望がある。

累計販売台数は約2万台!スーパー銭湯や空港、新幹線駅、コインランドリー、米軍基地など…日本中で活躍する「あんま王」のビジネス戦略とは?

温泉施設やフィットネスクラブなどでよく見かけるマッサージチェア。さまざまな会社が製品を開発・展開しているが、そのなかでも近年、設置台数を伸ばしているのが「あんま王」だ。

これは、業務使用の視点で開発された、安全性と耐久性に優れたマッサージチェア。スーパー銭湯をはじめネットカフェ、空港、新幹線駅、コインランドリー、そして米軍基地など、一見マッサージチェアとは縁がなさそうな施設にも数多く導入されているのが特徴だ。

2024年には累計販売台数が約2万台を突破したあんま王。なぜ、これほどまでにヒット製品となり、多種多様な設置場所の開拓に成功したのだろうか。今回は株式会社日本メディック 会長の城田裕之さんにあんま王のビジネス戦略について聞いた。

■業務用に特化した「あんま王」誕生秘話

――はじめに、貴社の事業内容とあんま王の進化について教えてください。

【城田裕之】弊社では40年来、マッサージチェアを扱っております。創業当初は販売が主体で、健康ランドや温泉ホテルなどに設置していました。また、このような施設に来店したお客様にマッサージチェアを利用してもらい、ご自宅用に買ってもらうという営業をしていました。当時は家電量販店がなく、電気屋でマッサージチェアを扱ってもらえなかったので、このような形の販売方式を取っていたんです。

【城田裕之】ですが、時代とともに家電量販店や通信販売でマッサージチェアが売れるようになっていきました。一方で温泉施設などでの販売が困難になりましたが、施設側からは「マッサージチェアを引き上げるとサービス低下につながる」と言われ、今度は100円玉を投入して動くようにして収益を上げる形に切り替えることになりました。

――当初は今のようなコイン式ではなかったのですね。

【城田裕之】そうなんです。そのあたりからコイン式でのマッサージチェアの営業がスタートしました。ですが、当初施設に置いていたのは家庭用として開発したものでしたので、業務用として使用するには耐久性の問題がありました。施設で使うものと家で使うものでは使用頻度が大きく異なるので、生地が破れたりするんですね。施設側からすると修理の手間とコストが不満だったと聞いています。

【城田裕之】そこで、弊社商品のあんま王ではファスナーやマジックテープを駆使して短時間で生地を取り換えられるような形を開発しました。そして修理については、極力短時間・短工数で対応できるよう、少しの手間で直せるような構造にしました。あんま王は現在で4代目なのですが、1代目においてはたくさんの人に注目されるよう、目立つ・大きい・立派の3つを意識し、存在感のあるデザインでスタートしました。

――確かに、とにかく使ってもらわないことには製品のよさが伝わらないですよね。

【城田裕之】そうですね。2代目ではマッサージチェアを使っている姿を見られたくないというお客様の要望でフードをつけました。現在のものについてはフェイスシールドが付いています。また、最近ではイオンさんやららぽーとさんといった商業施設に置いていただいているのですが、景観を壊さないために白色のマッサージチェアが重宝されています。

――次に、あんま王の特徴について教えてください。

【城田裕之】やはり、傷みやすく消耗しやすい部分が簡単に交換できる構造にしているのが一番の特徴ですね。大手メーカーさんのマッサージチェアは大量に売れる家庭用がメインで、その派生型として業務用が使われています。一方で、弊社製品は業務用に特化しているので、耐久性や修理のしやすさなども含め、高頻度での使用回数に耐えられるような仕組みになっているのが強みです。

【城田裕之】また、簡単に管理ができるように付属のコントローラーで、何日間設置したか、どれくらい稼働しているか、何枚のコインが入っているかなどを一目で確認できるようにしています。また、施設によっては何台も置いていただいていることも多く、端っこのものと真ん中のものでは稼働時間が大幅に違うということもありますので、稼働率を確認して場所を置き換える、といったこともできるようになっています。

■商業施設や空港、新幹線駅、米軍基地など…さまざまな場所で活躍!

――あんま王は、主にどのような施設に置かれているのでしょうか?

【城田裕之】温泉施設が一番歴史が古いと思いますね。次に、フィットネスクラブ関係ですね。あとはコインランドリーにも入れていただいています。また、イオンさんやららぽーとさん、ゆめタウンさんなどの大型の商業施設にも設置いただいています。ほかにもネットカフェのブースの中や、自動車修理車検工場の待合室、そして米軍基地などにも入れていただいたりもしていますね。

――日本中のさまざまなところに置かれているのですね。

【城田裕之】そうですね。企業さんの福利厚生として会社内に置かれていることもあります。最近では、全国の空港や新幹線の待合室に入れていただいたりもしていますね。

――あんま王を施設に置いてもらうために、どのような戦略を立てて営業をされていますか?

【城田裕之】温泉施設やフィットネスクラブなど、すでにマッサージチェアが入っているところに営業をするというよりも、これまでにマッサージチェアが入っていなかった場所に販路を広げていくことに力を入れています。

【城田裕之】そうして、「こんな場所に導入されましたよ!」という事例をアナウンスすることで、全国各地の代理店さんが同じような施設を探して営業をしに行くということをしています。もともとはフィットネスクラブにも健康ランドにもマッサージチェアは入っていなかったのですが、一度設置されると競争原理が働いて他社さんも営業しに来ますからね。

【城田裕之】そのため、私たちはそもそもマッサージチェアを置いていない場所にマッサージチェアを入れてもらう文化を作るところから事業を行っています。たとえば、コインランドリーの展示会にあんま王を出して認知してもらい、コインランドリーの設計の段階であんま王が入るスペースを確保してもらうといったことをしていますね。

――文化を作っていくことは、マーケティング戦略においてすごく大事なことですね。

【城田裕之】そうですね。既存の場所にばかり営業していたら潰し合いになってしまいますからね。

――ちなみに、施設の種類によって稼働率が異なるといったことはあるのでしょうか?

【城田裕之】稼働率の高低は業種業態によらないところがありまして。それよりも施設内の場所選びのほうが大事だったりしますね。たとえば、温泉施設では浴場近くに置かれるとほとんど利用者がいません。なぜなら最近の温泉施設は退館前にまとめ払いが主流で、館内で現金を持ち歩かない場合が多いからです。ですので、必ずロビー付近に置いてもらうなど、置き場所の提案を徹底していますね。

【城田裕之】また、1日何万人ものお客様が来店する大型商業施設では、なおさら場所選びが大事になります。数メートル離れるだけで利益に大きな差が出てしまいますからね。ですので、商業施設では場所がよければ爆発的に売り上げを伸ばせます。営業担当や代理店さんが経験と感覚で、どこに置くのが一番いいかを判断しています。

――累計販売台数が約2万台を突破したと伺いましたが、どのような要因が大きかったと思いますか?

【城田裕之】やはり、過去になかった市場に持っていくことをはじめ、さまざまな業態に広げていったことが大きいですね。また、業務用の場合ですと、機械は消耗していきますので必ず買い替え需要が起こります。その際に、弊社の製品をもう一度入れ替えていただくためにしっかりグリップしていくことも注力していました。

【城田裕之】やはり機械ですので必ず古くなりますし、傷みます。そうなれば買い替えの需要が必ず出てきますので、その際に弊社を選んでもらうようなサービスを展開し、きちんとアプローチできているかがとても大切ですね。これからも新しい市場に参入すると同時に、リピーターさんを大事にする努力を続けていきたいですね。

■夢は海外展開!あんま王のこれからとは?

――あんま王の市場を拡大させていくうえで、今後はどのようなことに取り組まれていく予定ですか?

【城田裕之】最近では現金を持たない方も増えてきていますので、QRコード決済や交通系ICなどのキャッシュレス決済への対応を進めていきたいと思っています。コインを財布から取り出すのも手間ですからね。スマートフォンでピッと支払ってマッサージができるようになれば、さらに多くの人に使ってもらえるのではないかと考えています。

【城田裕之】それと、あんま王とネットワークをつなぐことによって、現地に行かずとも管理ができるような形を構築したいですね。DX化にどんどん力を入れていきたいと思っています。

――ありがとうございます。最後に、今後のあんま王の展望についてお聞かせください。

【城田裕之】現在、日本全国で万を超える数のあんま王が動いています。そのおかげでネーミングも徐々に浸透してきましたし、最近では名指しでご注文いただく個人のお客様も増えてきております。ですので、まずは業務用でしっかりと販売の土台を作り、家庭用にも展開していければいいなと思っています。

【城田裕之】そして、最終的には海外展開も視野に入れていきたいと考えています。近年ではベトナムに出荷した実績もありますし、需要は必ずあると思います。そのために今年はISO 13485という医療機器の品質管理システム構築のための国際標準規格も取得しました。今後は国内海外問わず、さらに市場を拡大していきたいですね!

取材・文=福井求(にげば企画)