金価格の上昇は今後も確実に続く…各国の中央銀行が「金売り」から「金買い」に転じた納得の理由

AI要約

日本の個人投資家がゴールドを熱狂的に購入しており、ゴールドの国内店頭販売価格が上昇していることが明らかになっている。

過去はゴールドは「売られる資産」とされ、欧米の中央銀行はゴールドを売却していたが、最近では日本人投資家がゴールドのETFを積極的に買い増しており、意識の変化が見られる。

ゴールド価格の下落が続いていた経緯、ゴールド売却制限が設けられた理由などが詳細に説明されている。

金価格上昇が続いている。背景にはなにがあるのか。エコノミストのエミン・ユルマズさんとフリーアナウンサーの大橋ひろこさんの共著『無敵の日本経済! 株とゴールドの「先読み」投資術』(ビジネス社)より一部をお届けする――。

■日本人もゴールドを猛烈に買っている

 【エミン・ユルマズ(以下、エミン)】2023年8月末、ゴールドの国内店頭販売価格(税込)では、1グラム1万円を超えました。

 つまり、1キロインゴットバーは、もう1000万円を超えている。

 【大橋ひろこ(以下、大橋)】このゴールドのETFのチャートを見てください(図表1)。このとおり、日本のゴールドのETFの残高は大きく伸びています。

 ドル建てゴールドのETFは、2020年あたりから、機関投資家の資金が抜けており残高が減少していますが、日本のゴールドのETF残高は増え続けています。

 つまり、日本の個人投資家がゴールドのETFを猛烈に買っているのです。

■逆張りの日本人投資家が順張りに転じた

 【エミン】たしかに勢いよく買っていますね。

 【大橋】少し前まで日本人は逆張りの特性が強くて、ゴールドの相場が上がると、家にあるゴールドをかき集めて地金商の店頭に持ち込んで売っていました。

 ところが、いま日本人の個人投資家はゴールドの相場が上がっているのに、ゴールドを買い求めています。ゴールドが高くなってもさらに買う、欧米型の順張りスタイルに変わっているのです。

 日本人の意識も相当変わってきているのでしょう。デフレ時代が終焉し、今後インフレが進むだろうことに気付いている人は、キャッシュをゴールドに換えているのです。

■かつては「売られる資産」だった

 【エミン】インフレの意味を理解して行動に出る日本人が、どんどん出てきているということですか……。

 【大橋】これは過去50年のドル建てゴールド価格の推移です(図表2)。

 1トロイオンスのゴールドが35ドルの米ドルと交換されていた金・ドル本位制は1971年のニクソンショックで突如終焉します。以降、市場で取引されゴールド価格が形成されるようになりました。

 しかし、80年に875ドルという当時の史上最高値を付けた後は、低迷が続きました。

 【エミン】かつてゴールドは「売られる資産」だと認識されていましたね。

 【大橋】そうです。1990年代後半までの期間、それまで大量のゴールドを保有していたヨーロッパ各国の中央銀行はゴールドを売却し、上昇目覚ましい米国のドル資産を購入していました。

■「ゴールド売却制限」で流れが変わった

 【大橋】89年にベルリンの壁が崩壊、90年には東西ドイツが統一、米ソ冷戦終結が宣言され、米国が名実ともに世界の覇者となったためです。

 98年には米国の財政収支も黒字に転換、米国債や基軸通貨ドルの信認が上昇、欧州の中央銀行によるゴールド売却によってゴールド価格の下落が続いたのです。金利の高いドル資産に比べ金利がつかないゴールドへの注目が薄れたということです。

 ところが、99年9月、ECB(欧州中央銀行)とヨーロッパ各国の中央銀行は、ゴールドの売却を制限する協定を結びます。「ゴールド売却制限協定=ワシントン協定」です。